育児に対する気持ちの行き違いから夫婦喧嘩になり、その日から行方が分からなくなってしまった母親。残された父子3人は、収入も少ないまま、先行き不安な生活を始める。
本作の母親役は「アメリ」のオドレイ・トトゥ。そう言えば、同じフランスのイザベル・ユペールが失踪する母親を演じた「母の残像」も印象深い作品だったが、やはり国に関係なく、母親の存在は家族の姿を映し出す象徴なのだろう。
本作で描かれる家族は、母の失踪以降、全てが悪い方向に連鎖してしまう。友人宅でも親子間のトラブルが発生するのだが、最初から家族を傷つけようとする人はおらず、ちょっとしたすきま風が、親子の関係を悪戯に引き裂いてしまう様子を、繊細な脚本で見事に描いている。すきま風はやがて大きな「向かい風」へと姿を変えていく。