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越後奥三面 山に生かされた日々のtoのレビュー・感想・評価

5.0
5/16(木)夜20時の回が満席。びっくりした。
久しぶりのポレポレ東中野。
レイトだし、昔のドキュメンタリーだし、すいてるだろうな、と思っていた。
え、なんで? なんでこんなにお客さん来てるの?
上映後のトークでも、登壇者(故・演出家の弟子)が驚いていた。
なんでみなさんこんなに来てくださるんですか、と。
人気は今日だけではないらしい。
今回の上映は明日までだけど、急遽、7月のアンコール上映が決まったらしい。

私は、昔の日本の民俗学的な本を読んでいたので(「ものいわぬ農民」や宮本常一の紀行本)、映像で見られればラクだなと思っていた。
東北、好きだし、よく行くし。
テレビでも「甦る新日本紀行」とか好きだし、福岡のテレビ局による古いドキュメンタリー「祭りばやしが聞こえる」とか大好きだ。
Twitterでも古くから残る日本の風景とか路地好きの人々をフォローしてるし
鉄道も、やはり古い国鉄車が人気だ。

これまで、会社帰りに見られる夜の回がなかったけど、今週はレイトなので、サービスデーの木曜に来た。

越後、といえば新潟かと思ったがそうではなくて
山形の山のなかの集落、奥三面(おくみおもて)が舞台だった。

1980年〜84年くらいに撮影された映像。
当時、自分は中学生で、80年代アイドルとかチェッカーズとかが普通に流行っていた。

雪深い奥三面では、暮らしの様々なことを集落のみんなでやる。
春になると家族でぜんまい採り。わざわざ、小屋に住み込んで、家族総出で働く。

自分もたいがい田舎だったけど、東北の山村は、もっと、昔ながらの生活だったんだなぁと、いま、知る。

クマをとって、解体したり、山に感謝をささげたり。
丸太で舟を作ったり。
茅葺きしたり。
百万遍をしたり。

2時間半もあるので、様々なことが丁寧に描かれる。
その奥三面は、その後、ダムに沈んだ。
今はもうない。

かろうじて、知っている気がする、昔の暮らしを、映像で確かめる。
あれはなんだったのか、俯瞰する。
改めて知る。

大牟羅良「ものいわぬ農民」で知ったように、村人たちは、表だってはいわない本音をたくさん抱えている。
だからドキュメンタリーのカメラに映るのは一部であり、表面である。

この映像をつくった姫田さんは、事前に調べていくけれど、現地では、一歩も二歩もさがる、という人だったという。
調べたことが、現地で知識として出ることを、よしとしなかった。

自分が主体となって感じる、のではなく、現地の人に教えてもらう、のだという。

また、自分のことを監督と言わなかったそう。スタッフみんな同じ立場ていう考えだったから、と。

昭和レトロブームは確かにあるけれど、このような古いドキュメンタリーも注目されていることから、私たちは、単なるノスタルジーというよりは、日本の、自分たちの来し方を今いちど確かめて、知らなかったことも知りたい、そして大人になった今の自分たちなりに理解をしたい、という欲求があるのではないかという気がする、そのためには、このような、貴重なドキュメンタリーをスクリーンで見られる、限られた機会は逃せない、ということで、多くの人がわざわざ足を運んでいるのではいだろうか。という気がする。
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