安堵霊タラコフスキー

ロスト・イン・パリの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ロスト・イン・パリ(2016年製作の映画)
4.8
自分としては決定的だったが語るほどのことでもない偶然によりこの映画の存在を知って、予告編を見たらその雰囲気の良さに鑑賞確定リストに即入れたわけだけど、実際見たら期待以上の出来に90分幸福感を味わった

まず主人公フィオナの住むカナダの寒冷地の全景を模型で表し、パントマイムで吹雪を表現するスタイルに嘘っぽさの味にパントマイマーならではの独創性と面白さが感じられ、この時点で無二の名作になることが確信できた

というかこの冒頭からしてそうなのだが、ほとんど固定カメラしか使わない古典的手法に極力動きのみで笑いを産もうとする姿勢にと、意図的否かはさておきチャップリンやキートンといったサイレント期の喜劇役者にして喜劇監督、そして同じくサイレント期のコメディの旗手ルビッチ等に通じるものが端々から伝わり、その原初的ともいえる映像表現の数々に楽しさと嬉しさでたまらない気持ちになった

だがこの作品で一番感動的だったのが、これが遺作となったエマニュエル・リヴァの可愛らしくもある演技で、足だけのダンスも実に愛嬌もあるものだったし、ラストも彼女の最後の出演作に相応しいものとなっていて運命的なものすら感じてしまった

この作品は実に低予算じみていて、時折雑さも垣間見える場面もダンスシーン等いくつかあったのだけど、作風故かその雑さも良さに思えるような茶目っ気があり、そういう粗も含めて良い作品だったなと思えるものだった