半兵衛

ブラッド・ワークの半兵衛のレビュー・感想・評価

ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)
3.5
イーストウッドには監督デビュー作の『恐怖のメロディ』や『タイトロープ』など時々サイコサスペンスの趣が強い作品を放つ傾向があるが、本作もそう。犯人に深みのある設定がついておらず単なる異常者になってしまっているし、ラストがあまりにも大団円でサスペンスの余韻が全く無かったりと色々突っ込み所はあるが、それでも同時期に製作されていたサスペンス映画の雰囲気と遜色のない造りになっているのがさすが。

他のレビューでも語られているように、ブライアン・ヘルゲランドの脚本はメインとなる殺人事件の全容をいきなり見せず、少しずつ小出しにして捜査するイーストウッドと観客の心情をシンクロさせて作品から目が離せなくなるようにする語り口が素晴らしい。容疑者となる怪しい人物が徐々に消えていき、ある一つのヒントから真犯人があぶられて出てくる後半も見事。

犯人は誰かというミステリーだけではなく、随所にユーモアのある演出を配して観客をリラックスさせるのが心憎い。序盤のドーナツの使い方に思わず微笑んでしまったし、ジェフ・ダニエルズの飄々とした演技がシリアスな主人公と凸凹な関係となり二人の掛け合いが妙に面白かった。

イーストウッドと敵対する刑事もいい味を出していて、結構ひどいことばかり言っているのに挙動がどこか可笑しいので妙に憎めない。ラストの捨て台詞が結構上手いことを言っていて思わず爆笑。

車にひかれそうになったり、疾走したりとイーストウッドが70歳という年齢を感じさせないアクションを披露しているのも見所の一つ。でもそのせいでとても心臓移植をしたばかりの体に爆弾を背負った老人に見えないのはご愛嬌。
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