きえ

女教師 シークレット・レッスンのきえのレビュー・感想・評価

3.6
1つ前に高校男性教師と女子高生の恋の映画をレビューした流れで、高校女性教師と男子高生の愛憎劇をレビューします。

レビューに入る前に…
男性教師と女子生徒の場合はだいたいが純愛っぽい流れで、女性教師と男子生徒の場合は昔から"レッスン"と付くのはどう言う事なのでしょうか⁇

気を取り直して、この作品は今年1月に韓国で公開されたものの日本では劇場未公開でしたが10月にWOWOWで日本初公開されました。

多くの方が観れる作品ではなさそうなので、レビューで楽しんでいただけるよう頑張ってみます。

教師と生徒の禁断ものと言うともはや1つのジャンルのようだけど、日本と違ってそこは韓国映画、純も不純も混じり合ってドロッドロ。

韓国映画お得意の社会風刺は当然の当然で、格差階級社会、女性差別、雇用格差、コネ社会…の不条理を反映し、しかも女教師2人と男子生徒との禁断の3P愛憎劇と言う、もはや普通じゃ燃えないのね的設定。

しかも話のメインとなるのは女教師同士の嫉妬と反発。何て言うの、とにかく全てにおいて勘に触る存在と言うものはいるものだ。水と油と言うか住む世界が全く違うと言うか。


片や30代で独身。特別美貌がある訳でも地位やお金がある訳でもなく慎ましやかな身なりと慎ましやかなアパート暮らし。作家を目指すと言いながらうだつの上がらないヒモ男との腐れ縁。非正規採用の為男子生徒からは『非正規のくせに』と屈辱的言葉を投げ掛けられている。名前はヒョジュ。

片や大学卒業したてで若くて綺麗でミニスカートなんて履いて来ちゃう自意識過剰ぶりっ子女。父親が高校の理事長でそのコネを使った正規採用。運転手付きの車で通勤しイケメンで将来有望な婚約者もいて男子生徒にもチヤホヤされている。名前はヘヨン。

ずらっと書いただけでも分っかりやす〜い図式なんだけど、要するに何も持ってないヒョジュが全てを持ってるヘヨンの存在によって自分の中に溜めて蓋をしてた不満だったり理不尽さだったりのマイナスの感情を剥き出しにされてしまうのだ。

見合う能力もないくせに恵まれた境遇だけで何も考えず楽に生きてる感じも耐えられない嫌悪なのだけど、その上更に目を掛けてたバレエ特待の男子生徒ジェハと"なに"してる所を目撃しちゃって怒りの炎に更に灯油撒かれちゃった状態。

その激しい嫉妬とは…自分のヒモ男とは比べものにならない素敵な婚約者がいるのに若い男の子といい事しちゃって、もうあの女だけは絶対許せん!みたいな(笑)

そうなんです。これは恋物語と言うよりは女同士の大バトルなのです。

しかし、韓国映画はバトルだけでも終わらせません。この男子生徒ジェハが"ある目的"を持ってヒョジュとの距離を縮めて行く事から物語は更にドロドロに。

男同士なら気に入らない奴を殴り倒して終わりかもしれないけど女同士は暴力こそないまでもある意味暴力以上に怖い。

そして禁断の三角関係は"やかん"によって終わりを迎える。お湯を沸かすあのやかん。やかんの使い方ってこんなにも恐ろしいものとは思わなかった。さすが韓国映画!発想が怖っ‼︎

観終わってみればこの物語には一つだけ純愛があった。愛を獲得する為に払った代償はあまりにも大きいけど。

この作品何が凄いって、主演のキム・ハヌル の正統派愛されヒロインからの見事な脱却ぶり。韓国映画界の凄いところは日本と違って役者が善人から極悪までどちらも演じる所。今迄は綺麗なお姉さんで真っ直ぐ人を愛する役が多かったけど、この役は生活にも人生にも疲れた感満載で最初から最後までマイナスの感情剥き出しの役なのだ。今年の釜山国際映画祭のオープニングで司会を務める予定だった(妊娠により降板したが)ほど人気の女優さんがよく引き受けたなと思うほどのイメージ破り!素晴らしいし見事でした。

そしてもう1人、26才にして違和感なく男子高校生を演じ、ラストで驚きと恐怖と悲しみと絶望を素晴らしい表情演技で見せてくれたイ・ウォングンにも拍手。子犬の様な胸キュンフェイスに見覚えあると思ったら『 網に囚われた男 』でも胸キュンだった青年警護官役だった。

最後に監督のキム・テヨンについて調べてたら、なんと、ななんと、あの『ラストコーション』でトニー・レオンと本番疑惑まで出るほどの過激ベッドシーンで衝撃デビューをしたタン・ウェイと結婚して子供も生まれてたーー!ビックリ‼︎ 7年前に『レイト・オータム』と言う作品で監督と主演女優として出会ったとの事だけど、イケメン監督だからそりゃ女優さんも惚れるよなぁぁ。お幸せに!
きえ

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