韓国の名匠ホン・サンスが実生活でも不倫関係であるキム・ミニを主演に、まさにふたりの関係をパラレル的に撮る様な大胆というか、観客からしてみれば興味津々過ぎる4連作一挙公開。これがまた、面白いですw
夏目漱石の「それから」よりインスパイアされたというタイトルとテーマ観が絶妙。
人生はままならない。「自分は主人公や主人ではない」。
不倫というスキャンダラスな誹りを免れない立場にありつつ、それに対する一種の諦観というか、そこに重過ぎる意味や責を見出さない、まさに「それから」としか言いようのない人生観、映画観が心地良い。私の知っている過剰でパワフルな韓国映画とは違う独特な滋味。
冒頭より時系列がシームレスに移行しながら進むのを把握してからは、その違和感というか、心に何か引っ掛かる感覚を面白がりつつ、ふたりの人物の会話や視線の交わりや真逆の噛み合わなさが可笑しかったり。
モノクロームの画面が、時間や空間の感覚を忘れさせてくれるのが心地良い。
そして、黒髪の間に浮かび上がるキム・ミニの美貌(と言うには、独特な、でもとびきり魅力的な顔立ち)をより鮮やかに際立たせる抜群の効果を出している様に思います。
今回公開された4連作の中で1番新しい作品という事で、ホン・サンスもキム・ミニを1番美しく撮る方法を心得ているという事でしょうか。
