螢

2重螺旋の恋人の螢のレビュー・感想・評価

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
3.7
さすがフランソワ・オゾンというべきか否か。本当に身の毛のよだった悪夢的官能スリラー。エロくて、グロくて、暴力的で、残酷で、不気味で、結局不可解で…けれど、ちゃんと美しい。

止まない体の不調が精神的な原因にあるのではと思って精神科医のもとへ通い始めた若い女性クロエと、彼女を担当した精神科医のポール。
二人は医師と患者の立場を超え、すぐに恋仲になり、一緒に暮らし始める。
精神的にも物質的にも満たされたはずのクロエの不調は治らないまま。
やがて二人の生活に亀裂を生じさせたものは…。

観終わっても、何が真実で、何が嘘で、何が妄想だったかわからないままで。
頭は渾然としているし。
身体はゾッとしているし。
でも心が惹かれてるのは確かだし。
観終わって疲れました。

真実を明らかにしたはずのあのラストが、どうにも真実だと思えず、まだ裏に、あらゆる残酷な恐怖の病があるのではと勘ぐってしまうあのつくり。

怒涛の展開の中で転機となるシーンはどれも容赦なくエロティックだったりグロテスクだったり。
そのため、(映画館だというのに)何度もビクッと身体を揺らしてしまったり、目を伏せたたりしてしまいました。

それでも、その背景や、それらを繋ぐ何気ないようで実は何気なくないシーンの寒々しいくらいの完璧なまでにスタイリッシュな美しさからは目を離せない。
でも、その完璧な映像美の中に、彼らの恐怖と狂気に繋がる様々なものが、実に象徴的に、緻密といっていいほどに巧みに配置させていて、その見事さが、これまた背筋を寒くさせます。

もうまさに、タイトル通り、螺旋的なループ。

そして、精神的病理と肉体的病理、男と女側、母と娘、双子…。
あらゆる対立的概念が絡まり合っていて層をなしています。

色々な意味で、「2重螺旋の恋人」というタイトルは内容にぴったりだと思います。

二度目を観たいかと言われたら、エログロが苦手な私は、正直に言って、ひとまず今は遠慮願いたいところですが。

けれど、二度三度と繰り返し観ないことには、この入り組んだ内容の全ては読み取れないし、改めて気づくことや感じることは絶対に多いだろうということはわかる作品。
DVD化される頃にもう一度勇気を奮い起こして観たい作品ではありますね。
螢