けーはち

ラブレスのけーはちのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.6
ロシア映画。離婚直前夫婦は互いに新しい相手を見つけて息子に無関心。どちらも引き取る気はなく寄宿舎に送り出そうとする。そんな中、息子が失踪。早く別れたいのに息子を探す間は同行せざるを得ずグチャドロな本音や嫌な人間関係が映し出される。

孤児や毒親で親の愛情を知らない夫婦の背景説明が語られるが、それ以上に、ハイソな高級マンションのすぐ傍の廃墟ビルが表すいびつな格差社会、「家出のバカ息子になど構ってらんない」と捜査のやる気のない警察、ニュースでたびたび流れてくる内戦の情報とか共産主義の爪痕、ロシアの生活、社会、そこから滲み出る苦悩をありありと表している。

劇中に出てくるNPOの捜索救助団体「リーザ・アラート」は実在していてモスクワだけでなくロシア各地の都市でとてもボランティアとは思えないほど組織的な統制の取れた人探し活動をしているそうで、監督はそこにせめて市民意識の覚醒と救いの形を見ようとしたんだと思う。それが劇中で開花したとは到底思えない終わり方だったけど……