Masato

女王陛下のお気に入りのMasatoのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.3

前に見た「ロブスター」を呆気なく爆睡してしまって、ヨルゴスランティモス監督作品との相性は悪いと思いつつのオスカー候補であるからと半ば強引に鑑賞。ロブスターよりかは楽しめたが、変な作りの映画である以上のものを見出せなかった。

オスカー候補でエマストーンがキャスティングされているからか、シネコンで公開されているが、この監督の作品は全くもって大衆的ではなく、人をかなり選ぶミニシアターに適した映画を作る人なので注意。

女王陛下のお気に入りとなって下克上を目指す女中とブレインの女とのドロドロ水面下バトルが見所だが、まあヨーロッパ映画なりに落ち着き過ぎている。これとよく似た作品で韓国映画の「お嬢さん」の方がパワーもあり変態さもありでかなり面白く、本作は今ひとつだった。

ただ、広角のレンズを使った魚眼みたいな映像が多く、基本的にはカメラの軸は固定してパンを振るだけといった古臭さが独特で癖になる。音楽も不協和音で不快さをかきたたせる。

また、キャストの演技は大変良く、エマストーンの圧倒的な怖さ、レイチェルワイズの冷徹なかっこよさ、オリビアコールマンの不安定さは凄まじい演技力で表現されている。

こう見ると、エマストーン演じるアビゲイルは悪知恵が働く悪女ではあるが、親に売られてきて頭は切れるし、世渡り上手。レイチェルワイズ演じるサラは女王のブレインとして一人で見事に動いているが、女王を唆そうとする。オリビアコールマン演じるアン女王は我儘で気難しいが悲惨な過去を持っている。誰もが頭ごなしに悪いと言い切れず、故に哀れに醜く見える。

まあ、思うことはひとつ。誰かを蹴落とすほど貪欲でなければ上に立てない。だから、私は上に立ちたくない。絶対的な名誉の前では、その貪欲さなんかは無意味になる。
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