うめ

女王陛下のお気に入りのうめのネタバレレビュー・内容・結末

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

王宮が舞台だと聞くときらびやかな世界を想像してしまうが、これはおとぎ話ではないので、そんな世界はない。

女王のアン、彼女の幼なじみのサラ、上流階級から没落したアビゲイル、3人の女の物語。

アンからもらった手紙を燃やすサラと、サラがアンに送った手紙を燃やすアビゲイルのシーンが印象的だった。
最初は、手紙を燃やしたアビゲイルが涙を流した理由がわからなかったが、自分が勝てないことを悟り、悔しさや惨めさから出た涙なのかなと思う。

アビゲイルが欲しかったものは何だったのか。彼女は、これだけは失わないと言った誇りを捨て、愛を軽んじ、地位だけを手に入れた。みにくいアヒルの子から外側だけ白鳥になった空っぽの女の子は、大空を羽ばたいて幸せを感じることはできないのだろう。

上に立つ人間はただでさえ孤独なのに、子どもを17人も失ったアン。サラが彼女を操って政治を動かしていたのは事実ではあろう。しかし、何も言わずただ従うだけだったり、上っ面だけの甘い言葉を吐くよりは、「アナグマ」や厳しい言葉を言ったりするサラにはアンへの愛があったのではないだろうか。手紙を燃やすサラの表情1つでそう感じられた。

めでたしめでたしでは終わらない物語。しかし、だからこそ、この映画は胸に突き刺さって忘れられないだろう。
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