砂

ザ・スクエア 思いやりの聖域の砂のレビュー・感想・評価

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非常に現代的な映画で、タイトルがまさに体を表した作品だった。

現代アートのキュレーターが関わることになるとある出来事と展示、2つの事柄から話が展開する。
この作品で中心となるのはタイトルの通り、「square」である。
意味としては、「正方形[長方形]」のほかに、「〔自分自身を〕(人)と折り合いを良くさせる」「〔金の〕貸し借りがない、清算が済んだ」「誠実(これから展開して『保守的な、つまらないやつ』という意味もある)と、かなり多義にわたる。これらはほぼすべて作中で描かれる要素となっている。

作中のアート作品「スクエア」や、芸中に登場する様々な「四角いもの」が問いかけるものが作品自体を自己言及しており、社会や人間関係の非対称性を暴いている。ところどころシニカルなユーモアで現代の現象や問題を描きクスりとさせられるが、主人公サイドの視点に知らずのうち同調していること(〔人や考えなどに〕一致する、同意する、という意味もsquareは含む)に気付かされる、サルのパフォーマンスでのシークエンスはなかなか衝撃的だ。

人と人との間には感情の衝突があり、すれ違いがある。それに直接正面から対峙することが難しい時代だ(主人公クリスティアンは、本心から謝罪をしながらも構造的問題へと論点を変えたことが実に皮肉である)。
現代アートにおける目的、問題喚起を充分に果たした良作だった。
砂