安堵霊タラコフスキー

大河のうたの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

大河のうた(1956年製作の映画)
4.9
拙さの残る傑作大地のうたの続編であるこの作品も、サタジット・レイの才気が一層煥発した映画となっていた

ガンジス川近郊等の人口密集地という、前作とは土地柄の違う様々な舞台を描いているため、人々の行水や勉強風景のような人間を中心とした描写が目立つが、それでも基本的な撮り方は良い意味で変わっていないので趣を異にした味わいのある映像が堪能できるのが素晴らしい

しかも技術的な面では陰影のつけ方や効果的な音響の使い方とか更に出来るようになっていることが如実に伝わってくるが故に、実質的に前作から発展した作品となっている

家族に関する描写も最低限のドラマ性と叙情的で美しい表現の数々で見事に描き切っており、ほとんどが悲劇的であるものの様々な出来事が実に心に沁みるものとなっていて感動的だった

拙いながらも表現が白眉だった大地のうたからその拙さを抜かして進歩させたようなものに仕上がったこの作品は、まさに大地のうた以上に素晴らしい作品で見事と言わざるを得ない

それにしても情感のある映像を撮ることにデビュー間もない頃から長けていたサタジット・レイという監督は、映画監督というか映像詩人の才能が抜群だったのだなとつくづく思う