けー

ニュー・ジャック・シティのけーのネタバレレビュー・内容・結末

ニュー・ジャック・シティ(1991年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「ジュース(Juice)」とか「ポケットいっぱいの涙 ( Menace II Society )」っぽい精神的に食らう感じの映画なんだろうと覚悟していたので、見なきゃ見なきゃと思いながらも後回しになっていたんですが。

集合住宅がなんだかヤバい感じになる理由がよくわかりました。

ポー兄の「フルスロットル (Brick Mansions)」」を初めて見た時は、てっきりアクション映画用の舞台設定だとばかり思っていたんですが、なるほどこういう風にアジト化していったのかと納得。
「パーソン・オヴ・インタレスト」でイライアス初登場回でも集合住宅がかなりギャングのアジト化していた場面がそういえばあったなぁとか思い出したりして、なるほどなぁとか。

あとデンゼル先生の「イコライザー2」でも集合住宅にそういえばギャングな感じの人たちが仕切っている感じのがあったなぁとか思い出しつつ、「ああ、こういう感じで集合住宅が根城にされていったわけなのかー」とか。

もっとバイオレンスみなぎる内容かと見る前はちょっと気が重かったんですが、いざ見てみると、もちろんバイオレンスなんですけれどもどちらかと言えばもうちょっと軽めというかエンタメ寄りな感じで。
そのエンタメのどさくさに紛らせて「何が原因でこういうことが起こっているのか」とか「現状でどういうことが起こっているのか」という情報を入れ込むのは、ただのエンタメとして受け流してほしくないということなんだろうなぁと思ってみたり。

クラックパンデミックでドラッグ汚染が深刻だったことや、ギャング同士の抗争がトリガーハッピーな傾向になり犠牲者が増加の一途を辿ったこととかが積み重なって、どうにかして歯止めをかけたいという思いがあったんだろうなと。
HBOドラマの「The Wire」でもギャングの銃撃戦の流れ弾が家の中にいた女の子に被弾してしまい死んでしまうというような描写があったし、「ジュース(Juice)」や「ポケットいっぱいの涙 ( Menace II Society )」でもストリートの若者のトリガー・ハッピーぶりの深刻さが取り上げられていたし、去年のインスタライブでICE-T、LL cool J、Ice Cube、T.I..らが話していた体験談の内容から考えても、本当にひどかったんだろうなと。


あ、映画の話してないかな?

あらすじはー、

母親を麻薬の中毒者に殺された過去を持つ黒人の刑事スコッティとかつて麻薬中毒者だった白人の捜査官ニックがコンビでニーノというやり手が率いる麻薬組織を潰すための証拠を探ろうと危険な潜入捜査を試みる。

な感じ。


内容よりも「Hip Hop at the End of the World」という写真集で見たまんまのファッションで、こんな感じだったのかーという物珍しさが先立ってしまって。当時、本当にこんな感じだったのかと。


あとお金を得た売人が羽振りよくパーティを開くのでラッパーの人やダンサー、コメディアンの人たちのニーズが増えて、「ギャラのいい仕事」という感じでそのおかげで知名度を上げていったり経験を積んで腕を上げていったという話とかもこの映画を見ながらこういうことだったのかなって、なんというかエンタメ業界と犯罪組織が近しい関係になりがちなのはこういうことかとか思ったり。

ドラッグが広まったとき、人の生活がどれほど根深く破壊されるかということもなんだかわかって。
世代にわたって破壊されるわけで、なんというか自然破壊と同じ感じだなぁと思った。
一度健全な循環が破壊されてしまうと再び回復するには何十年もの時間がかかるんだろうなと。

映画の中の裁判で「ドラッグは禁酒法と同じで法律で違反と決まったから犯罪になるんだ」とニーノが言い逃れていたけれども、最近のアメリカでマリファナが合法になったことを思うとどうもシュールだ。

余談ですがネトフリで「Trigger warning the Killer Mike」というラッパーのキラー・マイクが黒人にとってすみ良い社会にするためにはどうすればいいかと考えたアイデアを自ら実践してみるという相当辛口のバラエティ番組を見まして。

その中で一週間、黒人がオーナーの店でしかものを買わないということを徹底して過ごすという企画があったんですが、その中で一番苦戦していたのが「マリファナ」を手にいれることだったっていうのが。
売っている店のオーナーが黒人でも生産者が白人という場合は吸えないというルールでなかなか大変そうだったんですが。ふとなんだかだから合法になったとかなの???という薄寒い結論が見え隠れしつつ...。
まぁ、映画とは全然関係ありませんがニーノの発言からふと思い出したのでした。


ついでに、最近ネトフリの「Amend: The Fight For America」を見始めたのでその話も。

全6エピソードでまだ2エピソードしか見ていないんですが、”アメリカ合衆国憲法修正第14条”にまつわるその歴史と背景がすごくわかりやすく説明されていて。

映画で仕入れた知識でこれまで繋がっていなかったところとか、ピンときていなかったところなどがいい具合に腑におちていく感じで。

歴史が書き換えられていく過程もそういう感じで起こるのかと、とても興味深いです。凄まじいですけれども。
本当に凄まじいですけれども。
奴隷制度がなくなって、奴隷制度では身体は所有者の資産とみなされるので鞭打たれたり棍棒で叩かれたりと暴力を振るわれまくったとしても、利益の損失となるので殺されることはないんですが、奴隷制度がなくなって、アメリカ合衆国憲法修正第14条も徐々に骨抜きにされたとき、資産としてもみなされなくなっているために次々に殺されてしまうという事態が起こるんですが、そうなるまでの過程の最高裁判所の理屈の付け方とかがもう本当に全然意味がわからない感じで。

「あの夜、マイアミで」の中であったようなアメフトでの活躍を褒め称えつつニッコリ笑って「黒人はうちには入れない」と悪びれなくいうあの感じも決して盛ってるとかではなくて、当時のディフォルトな反応というのが分かってボーゼンと。
「風と共に去りぬ」をはじめとする昔の南部のありかたを懐かしむような映画が歴史の書き換えにどうかかわってきたというのかもわかりやすく。この流れでいくと2020年の銅像倒しの流れもそりゃそうなると理解できた感じでした。

別に記事立てて書けよって感じですが、1エピソードあたりの情報量のボリュームがすごいのですぐに忘れちゃいそうなので覚書として。

けー

けー