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MR.LONG/ミスター・ロンのlpのレビュー・感想・評価

MR.LONG/ミスター・ロン(2017年製作の映画)
3.3
『天の茶助』はスケジュールが合わずに観られなかったけど、『うさぎドロップ』が好きだったSABU監督の最新作ということで鑑賞。

暗殺に失敗して逃げのびた殺し屋(チャン・チェン)が、行き着いた田舎(栃木)で寡黙な少年と麻薬中毒の母親、異様に世話好きな近隣住民と交流をする・・・という話。冒頭の掴みはノワール感が出てバッチリ。以降は主人公と出会った人々との交流を、じっくりゆっくり描く。上映時間は約2時間だけど、体感時間は2時間30分ぐらいに感じるほど、非常にスローペースな映画だった。

メインで描かれる主人公の周囲との交流の描写は、何処となくユーモラスかつファンタジック。観る人によって合う/合わないがハッキリ出やすいとは思うけど、観ていて思わず笑顔になってしまう心地良さがあった。クライマックスには主人公が過去を清算するが如く怒濤のアクションを見せるけど、このシーンでロングショットを多用して、しっかり「アクション」を見せようとしていることは素晴らしい。演じるチャン・チェンの表情も良い。ラストも納得の行く締め方で、フィールグッドな良作といった印象。

逆にイマイチだったのは、必要なことと理解しつつも、ゆっくり進む展開にどうしても少し退屈してしまったこと。唐突な回想シーンに違和感を覚えたこと。全体的に話の都合が良すぎる(例えば、行き着いた田舎で運良く中国語を喋れる子どもと出会うこととか)こと。どれも根本的な所だけど、この辺り。
諏訪太朗らが演じる近隣住民の世話焼きっぷりに現実味を欠くことも気にはなったけど、心の再生を描くことに主眼が置かれた「ある種のファンタジー」として捉えると、そこまで気にならず。

最後に余談。日曜に観に行った新宿武蔵野館は空席が目立っていてビックリ。公開規模が小さいだけに、てっきり混雑してるとばかり思ってた。良作なだけに、もう少し多くの人の目に触れて欲しいところ。
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