francois708

真っ赤な星のfrancois708のレビュー・感想・評価

真っ赤な星(2017年製作の映画)
4.0
ガスが止まってしまったため二人で銭湯に行って背中を流しあっているときに、陽が弥生の背中に「何か赤いもの」を発見して「これは何」と問うと、弥生が「まだお子ちゃまなんだね」と言いながら陽の背中にキスマークをつける場面が好きだった。タイトルの「真っ赤な星」はキスマークのことなんだろう。烙印のように消えない印を捺されて、それでも、生きのびていくために、体を売る商売をまったく無表情に続けていく弥生の闇が深すぎて、14歳の陽にははじめのうちは何が何だかわからない。そんな少女にいきなりキスしてしまう弥生も弥生で、陽が弥生に夢中になってしまうのも無理はない。
二人ともヤ行の名前というほかになんの共通点もなく、看護婦と患者という関係の出会いがなければ交わるはずのなかった人生で、最後まで笑わず打ち解けないのだけれど、二人とも出口なく、行きどころなく、それでも相手が好きで互いに思いやる気持ちには偽りがない。結末は曖昧にされているけれど、このあと二人で幸せになってほしいというのはあまりにも無責任な感想なんだろうな。
パラグライダーで空を飛ぶイメージが繰り返されるが、これは自由になりたいという弥生の気持ちの表れだろうか。最後に「もう飛ぶのはやめる」という決断は、自由への妄想を捨てて、地に着いた歩みを始めようということだろうか。
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