原作を読んでから見たのだが、原作には到底及ばないお粗末な出来で失望した。
光太と梨花が恋に落ちるまでのプロセスの描写が雑すぎる。大学生と四十代の女性というあまり普通とは言えない組み合わせだからなおさら>>続きを読む
あどけない表情のソナをプライヴェートでインティメートな視点のカメラでずっと追うだけなのに、なぜか泣けてくる。
この子はまだ何も知らない、自分がどんな国に生まれてきたか、自分たちの親や親戚がどれだけの艱>>続きを読む
ヘリムとミナの、幻の対話の中で、「どうして産もうと思ったの」という問い、私も見ながらずっと思っていた問いだった。あんな形で犯されて身ごもった子どもなのに、ミナは「この子に愛されている」と感じる。今まで>>続きを読む
派手な演出もなく美男美女も出てこない、見るものに媚びようとする気が全くない、こういう地味な映画にこそ韓国映画の本領というか底力みたいなものが発揮されているように思う。シリアスなイ・ジョンウンもすてき。>>続きを読む
仏頂面で無愛想で無表情のまま淡々とテレフォンオペレーターの業務をこなす主人公ジナの表情に変化がきざすのは、空気を読まない新人の後輩の指導中に、2002年のワールドカップの年にタイムスリップしたいと言い>>続きを読む
ガスが止まってしまったため二人で銭湯に行って背中を流しあっているときに、陽が弥生の背中に「何か赤いもの」を発見して「これは何」と問うと、弥生が「まだお子ちゃまなんだね」と言いながら陽の背中にキスマーク>>続きを読む
はじめのうちは親たちの不始末に憤り、互いへの敵意をむき出しにして取っ組み合いの喧嘩までしていた二人の少女が、保育器の中の赤ちゃんと対面したのをきっかけに、何か仲間意識のような、連帯感のようなものが生ま>>続きを読む
雨にはじまって雨に終わる物語だった。
はじまりの、雨の中を運転するシーンから、雨上がりで道端にうずくまる少女に水をはねかけてしまう。その少女を、エンディングでは、今度は車に乗せて雨の中を走る。そのあい>>続きを読む
生まれて初めての韓国映画がチョン・ジュリ、ペ・ドゥナ、キム・セロンの「私の少女」だった。あれから9年、寡作のチョン監督が、ふたたびペ・ドゥナと組んで、忘れがたい作品を撮ってくれたことに感謝。
前作が中>>続きを読む
お父さんが娘のエマニュエルのことを「マニュ」と呼ぶ呼び方がかわいらしい。
すべてうまくいったのだろうか。請負人にとってはそうに違いないし、お父さんもそう思っていただろうけれど、娘たちにとってはそんなふ>>続きを読む
こういう静かな映画が好き。せりふよりもせりふとせりふの間の沈黙が雄弁に二人の距離を物語るような映画。
背景に鳴る音楽も寡黙でよい。
二人のあいだでつむがれる物語に集中させるために、思い切って家族を登場>>続きを読む
暴力シーンは苦手なので早送り、マッチョな肉体美を強調するトレーニングの場面も退屈。男らしいのは苦手みたい。
男が体を張って金を稼ぎ、女は男の帰りをじっと待つというのも、なんだか古くさい価値観に思える。>>続きを読む
設定は突飛なのに、映像や音楽や演技が静かで内省的で落ち着いていて、そのギャップが好きだった。
日替わりで違う外見の人間に生まれ変わり、キム・ウジンを何十人もの俳優が手分けして演じるのだけれど、おのずか>>続きを読む
借金に追われて人生に詰んでいた女性が、王子様のような男との出会いがきっかけで大富豪になる筋書きはシンデレラみたいで、実際、美容院で髪を整えてもらい、ドレスを試着させてもらって大変身する場面は玉の輿のお>>続きを読む
食べ物一つ一つがていねいに撮られていて、ぜんぶおいしそうだったし、キッチンに立つ人々の手つきや表情も美しかった。
恋愛要素すくなめなのもきもちよい。恋愛なんかよりもまず自分の居場所、自分のよって立つ根>>続きを読む
男性監督の撮るレズビアンのシーンは必要以上にエロチックになりがちなのではないか。前に見た『アデル ブルーは熱い色』でも感じたことだけれど、この映画もそうだった。レズビアンを興味本位に消費しているだけの>>続きを読む
ボーイフレンドができないことを周囲から揶揄されたり心配されたりしていたユンジュが、ジスと知り合ったのをきっかけに女同士の恋愛にあれよあれよという間にのめり込んでいく前半、多幸感にみちあふれている。ジス>>続きを読む
セクハラで逮捕されたワインスタインの製作した映画と聞くと、はじめからそういう色眼鏡で見てしまって、どうも楽しめなかった。
ドイツが舞台でナチスの戦争犯罪を扱っているからてっきりドイツ語かと思ったら英語>>続きを読む
イサベル・アジェンデの原作があまりにもすばらしすぎるので、映画を作るのは大変だったと思う。持ち味を生かすには5時間以上の尺が必要だったかもしれない。というより、精霊が行き交い、予知能力や千里眼が描かれ>>続きを読む
先日見た韓国映画『花咲く季節が来るまで』(2017)では、トランスジェンダーの主人公を女性が演じていたのに対して、こちらの主演は本当のトランスジェンダーで、生き方も正反対。
『花咲く』のヘスが、自らの>>続きを読む
欠かさず服用しなくてはならない薬、突然襲ってくる皮膚の炎症、主人公ヘスの謎めいた心と体の描写は、後半になって〈トランスジェンダー〉と言語化される。
自分の気持ちに正直に生きようとすればするほど、そんな>>続きを読む
ベネデッタが霊感に満たされるときに男の声になって威厳をもって語るところ、見るものを畏怖させる力があった。
マリア像の前で祈っている最中に像が倒れてきて、ベネデッタの上に覆いかぶさったとき、マリアの乳房>>続きを読む
原作を先に読んだが、戯曲としての完成度があまりに高いので、かえって映画化がむずかしいのかもしれない。原作にはエヴァ・スミスは登場せず、しかし登場人物全員から言及され、想像され、哀悼されて、登場しないに>>続きを読む
原作を読んでから見た。設定を変えたり省略したりしていても、主人公の孤立無援の心細い心情が痛いほど伝わってきて、終盤のトイレでの苦悶の表情も忘れがたい。
何やらオシャレな文明国のイメージの国フランスも、>>続きを読む
初めて視線を交わす二人、二度見したときにはもう姿を消している結婚式の場面から、初めて言葉を交わす二人、パーティーでお酒の中に落としてしまった結婚指輪を探し出してもう一度指にはめてあげるちょっとコミカル>>続きを読む
見終わってから、もしかして、と確かめたら、やはり女性の監督だった。浮気をした男性を、これほど虐めて困らせるなんて、痛快すぎる。
浮気をされた妻が、気落ちするどころか怒り狂って反撃、ごまかしたり言い訳し>>続きを読む
クイーンメーカーや夫婦の世界でのハイソでセレブなイメージしか知らなかったキム・ヒエが、ここでは化粧っ気のない地味でさびしげな中年のシングルマザーを演じていて、この俳優の新しい魅力を知る。
20年前に別>>続きを読む
映画としての出来はあまりいいと思えず、セリフ回しがせかせかして、余韻や間(ま)がなくて、台本棒読みの気味もある。
それでも引き込まれたのは原作の力だろう。原作にない設定の変更がいくつかあるけれど、それ>>続きを読む
映画製作当時アルジェリア独立戦争が進行中で、主人公のジュリアンもその落下傘部隊からの帰還者であることを思えば、社長への殺意は、ただ痴情からだけなのではなく、戦争を飯のタネにして稼ぐ武器商人への、よくも>>続きを読む
女性の尊厳を踏みにじる集団レイプの卑劣さを浮き彫りしているだけでなく、後半で、少女や小学生までがその嘲笑的行為に加担していくようすからわかるのは、スキャンダラスでショッキングな動画をネタにして脅したり>>続きを読む
邦題が意味不明なのだけど原題はシンプルに「春」で、冬という名の死に向いつつある病身の男が最後にもう一度春を見出す物語だった。ひとつひとつのシーンがていねいに美しく撮られている。
ベトナム戦争で傷を負っ>>続きを読む
途中で眠くならない映画はひさしぶりだった。こういう静かな映画が好き。
沈黙の場面が多く、背景音楽も抑制的に使われるが、それだけに要所要所で鳴る音楽がなおさら心にしみる。
シャーロットがピアノで弾く印象>>続きを読む
監督も脚本家も女性で、100年前の女性が受けた屈辱と、それに屈せずに行動し続けた勇気を深い敬意をもって語り継ごうとする強い意志を感じる。
牢獄でハンガーストライキをしている女性にむりやり管を突っ込んで>>続きを読む
携帯電話が出てくるので、今世紀のお話だとわかるけれど、今の時代にこういうことがまかり通る国があるなんて。部族同士のいがみ合いの解決のための政略結婚に思春期前の女の子を嫁として差し出すなんて。そういう風>>続きを読む
山田愛奈さん目当てで見たけれど、出番は少ししかなかった。応援しているのに、なかなか出番が来ないね…
わざとらしいセリフもキラキラの光も、漫画が原作と聞いてそう割り切って見れば、まあ許せるか。
主役の三>>続きを読む
原作を読んだあとで映画を見たけれど、原作のほうが過激で危うくて、映画ではそれが薄められている感じがして、少し物足りなかった。口移しでジュースを飲ませるシーンも、原作のほうがずっとエロチックで執拗で、映>>続きを読む