梅田

ラッカは静かに虐殺されているの梅田のレビュー・感想・評価

4.0
IS(イスラム国)がシリアの都市ラッカで行う非道行為を世界に告発し続ける集団「ラッカは静かに虐殺されている(RBSS)」を追ったドキュメンタリー。冒頭に一部だけ輝かしく映し出される表彰シーンは、この映画で語られる現状を踏まえて中盤でもう一度繰り返されるときには、何のカタルシスもなく、「まだまだ戦いの途中に過ぎない」という張り詰めた緊張感だけを残す。

人が死ぬ映像を低予算で作るためには、CGを使わないで本当に人を殺せばいい。何よりもリアルな映像が作れる。ISはメディア戦略を強化していて、若者を洗脳するためプロの製作者にプロパガンダ映像を製作させている。
この映画は明確にそのカウンターだ。芸術は常に相対的で、絶対的な正義はないという「題目」はあるけれど、それでも「映画」の持つ力を真に信じて、ISの作る「悪の映画」に立ち向かおうというひたすらに志の高い一作がこれだ。作る意義のない映画なんて無いとは思うけど、これほど作る意義のある映画もなかなかない。
梅田

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