アキラナウェイ

テリー・ギリアムのドン・キホーテのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.4
構想30年!企画頓挫9回!
それでも夢を追う男!
テリー・ギリアム!!
遂に実現した狂気と夢想のマジカル・ワールド!!

仕事への情熱を失くしたCM監督のトビー(アダム・ドライヴァー)は、スペインの田舎で撮影中のある日、かつて自分が監督した「ドン・キホーテを殺した男」の舞台となった村を訪れる。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人(ジョナサン・プライス)は、自らをドン・キホーテだと信じ込み、無理やりトビーを引き連れて、大冒険の旅へと出発する——。

現在と過去。
現実と夢。
正気と狂気。

物事の境目が曖昧なまま、狂人(自称)ドン・キホーテを旗振りとして進み出した物語はかなりヤバい!!

これは観ている者をも狂わせる。

序盤はまだいい。
観衆は何が現実で何が虚構かを分別出来る。

しかし、現在という時間軸なのに、過去の夢と狂気に囚われた老人を相手にする内に、トビーと同じく我々の平衡感覚まで狂わされていく。

振り回す側のジョナサン・プライスも、振り回される側のアダム・ドライヴァーも、いずれの演技も素晴らしい!!特に72歳とは俄(にわ)かに信じがたいジョナサン・プライスのハッチャケぶりがスゴい!!

ステラン・スカルスガルド、オルガ・キュリレンコと脇を固めるキャストも申し分なし。

現実世界で仮装パーティーなんて開くから、物語は更に虚構との区別がつかなくなってくる。

映像も美しいし、キャストも素晴らしい。
ある意味でこれはテリー・ギリアムの集大成なのだろう。

しかし、ドン・キホーテを追い求めたテリー・ギリアムの鬼気迫る執念そのものが、この映画を危険な媚薬へと変えてしまった。

自分がドン・キホーテで、お前は忠実な従者のサンチョだと寝惚けた事ばかり大声で張り上げる老人にツッコミ続ける133分は正直しんどい。

マトモな感覚の持ち主で、観衆の味方(見方)であった筈のトビーまで狂ってきて、更にしんどい。

鉱山(mine)は、全部自分のもの(All mine)だとか、彼は聖人(saint)?いや、狂人(insane)だ!とか、韻を踏んだ脚本とか面白いと思えていた中盤までは、意識もしっかりしていたけど。

何が現実で何が虚構かわからなくなる終盤は、兎に角早く劇場を出たくて堪らなかった。

最後に言いたい事はネタバレを含むので、行間を空けます。

















作風がこんなんだから仕様がないけど、勘違いが元でドン・キホーテを名乗る老人が命を落としてしまう展開が辛過ぎる。しかも加害者はトビー。

こうなると、笑えなくない?

狂気の末に誰かが死ぬのは本当に嫌だなぁ。