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テリー・ギリアムのドン・キホーテのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
ひとまず完成しただけで満足(о´∀`о)
一方、その頃自分はパソコンが死んだ

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これはもう絶対「ロスト・イン・ラマンチャ」を観てから観るべき!
まさか「ロスト・イン〜」から20年近く待たされるとは思わなかった。むしろサグラダ・ファミリアみたく一生作ってるタイプの映画かと思ってた。
なにはともあれ、テリー・ギリアム監督が念願叶って完成までこぎつけたが喜ばしい。構想30年、頓挫9回は伊達じゃない。

「ロスト・イン〜」見てるとテリー・ギリアム自身がドンキホーテに思えてくるのを、そのまま自嘲気味に映像化。監督自身と脚本を共著したトニー・グリソーニを主人公トビー・グリソーニに重ねて、正気と狂気の皮膜を行ったり来たりしてるよう。
爆問・太田光がコメントを寄せた通り「映画作りは風車に戦いを挑むような行為。馬鹿がやる無謀な冒険。ドンキホーテは正気に戻れば終わり。テリー・ギリアムはAIに制御されずとうとうやり遂げた」

モンティ・パイソン含めて、長年「個人と体制」「正気と狂気の違いって何さ?」をシニカルに描きつ続けてきたテリー・ギリアムの集大成。不条理な世界観の中で、理不尽に振り回される主人公。徐々に蝕まれる正気と、取って代わる狂気。

トビーの行動が無茶苦茶で、一貫したキャラクター作りがされてると思えなかったり、凝った画角の割に意味を感じられなかった箇所もチラホラ。とにかく完成を優先させて、ディティールを捨てざるを得なかった印象も受けた。

取って付けたような決着だけど、個人的にはすごく溜飲が下がった。一貫して正気と狂気の紙一重、閉塞した状況を突破する想像する力を描いてきたテリー・ギリアムが集大成で残したのは、誰か一人でもバカげた想像を信じてくれれば狂気も正気に変わるってオチに見えた。

なにより「未来世紀ブラジル」の狂気と皮肉に満ちた結末に、35年越しでハッピーエンドを用意した感じにも思えて胸熱。

アダム・ドライバーがかつて見たことがないほどスラップスティックなシチュエーションに放り込まれて、間抜けな姿を晒すのがまずもって面白い。カイロ・レンの寡黙で朴訥としたキャラをイメージしてると、女癖の悪く卑近な俗物キャラが新鮮。あと手がデカい、手が。

珍妙かつ絢爛豪華な世界観は健在。特に美術・衣装・メイクの作り込みが素晴らしく。中世スペイン風のどこか見覚えあるのに、どこか狂気を帯びたデザインが秀逸。特にヒロインのアンジェリカことジョアナ・リベイロのメイクが印象的で、15歳の少女のようにも艶のある大人の女性にも見えるし、夢現の天使みたいな存在感に見せた。

長年待ちに待った作品が見られて嬉しいが、頓挫までの顛末を記録した「ロスト・イン・ラマンチャ」のが面白いと感じてしまった💧

14本目
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