山本Q

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結の山本Qのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

過去ツイートが掘り起こされディズニーから解雇になったジェームズ・ガンの棚ぼたDC作品。
ジェームズ・ガンの新作が見れるならこれに勝る幸せはない。ネタバレされる前にIMAXの席が取れたので早速。
今回のお目当ては野性味溢れるアイツ。ただでさえ楽しみな映画なのに更に期待が高まる。予告編で一目惚れ。サメ男がグルードならこのこいつはロケット的立ち位置に違いない。動物を愛するガン監督だからスースクのこいつにも相当な見せ場をいくつも用意しているはず。スマホの待ち受けに設定して公開を待っていた。


映画は期待通りに面白かった。
一体どうなってるんだろう。
ガン監督作品の面白いところは、何がどう面白いのか説明できないところ。何であんなに面白いんだろう。
予想を裏切る展開の連続と魅力的なキャラクー同士のやりとり。カッコよくハマる音楽と映画的快感のある演出と絵面。それらの密度とクオリティが尋常じゃ無い。
なんだけど、これでジェームズ・ガン監督の魅力を伝えれてるとは思えない。もどかしい。

上記の他にジェームズ・ガン固有のキラメキは「道徳観」。というか不道徳観、不謹慎さ。モテないオタク特有のものに見えるけど、ホラー映画でまずはじめに浮かれた男女を殺すような類の不謹慎さではない気がする。元々の出身で培った哲学のようなものがあるのだろうか。

今作は題材が題材だけに、その悪趣味な冗談が清々しいほどハマっていて興味深い。
悪役目線という要素も不謹慎さを容認しているし、何より主人公たちの命が軽いことも劇中内で死を不謹慎に扱うことを良しとしていると思う。「自分たちは死んでもいいと扱われているんだから相手にもそういう扱いをしてもいい」という筋が通っている。
いつ死んでもおかしく無い主人公たちの立場から発展した価値観で、「死を笑うのは自分たちの境遇を慰めるには笑うしかない」から。なので、今作では死をちゃんと笑う必要があった。
と、悪趣味さに対してある種の信念を感じさせられる。
けれど作品が悪趣味さを容認しているからといって、ネタがそう思いつくわけでも無い。劇中では、寝ている人をピースメーカーが刺し殺すシーンが印象深い。あんな殺し方がどうやって思い浮かぶだろうか?
その辺は努力なのかもしれない。
「人物紹介を賭けの対象シーンにして面白くする」とかただの人物紹介にはしない脚本の密度が半端ないけど、あれは多分何回も何回も検証を繰り返して書き直してるんだと思う。だから、才能もセンスももちろんすごいけど、+労力を惜しまないすごい努力家だと思う。

(デヴィッド・エアー版(?)では結果みんないい人で、悪党をヒーローにするには難しいと考えさせられた。ただ人を殺しまくれば悪党というわけでも無いし。何より観客も楽しくないだろう。ホラーやスプラッターならいいけど、それでも殺す側を主人公にして不快感を感じさせないようにするには相当な工夫が必要だと思う。コメディではないけど、ハウス・ジャック・ビルトなんかは連続殺人鬼目線の映画で(凄く面白いけど)非常に不愉快である)

子供ネタは、自虐ネタか嫌味か反省か気になる。多分反省かな。


今回登場のキャラクターはほとんど誰も知らないけどみんなよかった。
ネタがどれもちゃんと面白い。本当にすごい。
ポルカドットマンのお母さんネタもよかった。
ピースメーカーみたいな見た目のキャラクターが茂みの中にいる絵がすごい。
あんなめちゃくちゃなことをしていながらそれぞれにちゃんと見せ場があるのもすごい。何人分?
ハーレイ・クインのアクションシーンも他のハーレイ・クイン作品とは違うアイデアが満載でよかった。
CGが主役ではなくキャラクターが主役なのも良かった。
軍隊に女性が普通に組み込まれているのも面白かった。
サントラも良かった。
どうやらイタチらしいウィーゼルも良かった。ジェームズ・ガンは動物を大切にすることでは信頼が厚い。
132分が楽しくてあっという間。
山本Q

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