かえるのエリー

世界で一番ゴッホを描いた男のかえるのエリーのレビュー・感想・評価

3.9
ゴッホ絡みでもう一本。先月行った「ゴッホと文化財展」は東京藝大監修の下、複製画制作の過程でゴッホの技術を科学的に見るというものだったが、本作の主人公シャオヨンは生活のために複製画を描いて売る。そんな彼が本物を知る前と後を追うドキュメンタリー。


以下、ネタバレ感想


印刷技術が発達した今の世の中で、シャオヨンやその弟子たちがスケッチから描くそれは複製画というより模写で、正直こんなの商売になるの?と感じる。弟子の描いたゴッホの自画像はゴリラのようで、ゴッホ愛の強いシャオヨンは描き直しを命じ、絵心のない弟子達は去っていく。

そんな彼が、とうとう本物のゴッホの作品を見にオランダを訪れ、ゴッホミュージアムに行く前に絵の卸先を訪れて愕然とする、その扱いと値段に。。。しかしその後、本物のゴッホの作品に触れて彼は気付いただろう、買い叩かれることの仕方無さを。それほどに本物は彼を圧倒したに違いない。

その後、ゴッホの人生を辿るようにフランスへ渡り名画のシーンを訪れ、最後はお墓参りをする。この旅がシャオヨンに与えたもの、帰国後に初めに描くモデルが最高に良い。

模写は勉強にはいいのだが、決して本物を超えることはない。学がないことを嘆いていたシャオヨンが本物を知り、選んだ道はゴッホ同様に厳しいかもしれないが、そこにポジティブさを感じるのは私だけではあるまい。ありのままの中国の生活も面白かった。