ちろる

男の優しい罪と罰のちろるのレビュー・感想・評価

男の優しい罪と罰(2013年製作の映画)
3.6
なんとも形容し難い独特な雰囲気の主人公。
そしてなんとも表現し難い孤独な映像。

主人公アブナーはかつて彫刻家であったが、今はビルの警備員として働いている。
夜な夜な合鍵を使って他人の家に忍び込む彼は、どうやらとある妄想に取り憑かれているようだ。

最初の頃、死に取り憑かれているようなアブナーの存在が不気味で仕方なかったのだけど、優しくされても心を開かず、彼を心配する家族にも顔を見せない彼の心の闇がだんだんと解き明かされていくうちに、だんだんこれまで見せられていた映像がしっくりといく。
苦しみや罪悪感は簡単に人生から離れてくれるわけはないけれど、それを直視しなければ前に進めるわけもなく、臆病な自分の心と対峙して自分の過去も全てありのまま見つめるアブナーの姿には自然と心を動かされた。

無駄な登場人物は一切なくて、全て意味のある存在だったのは、アブナーの閉じ込められた心象心理をうまく表わしていて良い演出。
かなり重いテーマでありつつ、ブラックユーモアを交えてかなりシュールな空気感が漂ってた点も個人的に好みでした。
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