このレビューはネタバレを含みます
逆位置のキリストとユダの物語です
前半刑務所内で最後の晩餐の画角で乾杯するシーンがあったり裏切りが常態の世界では逆に信頼が毒になったり
・開始間もないのに「お前はアザも綺麗だ」ってエンジン全開すぎて何事かと
・刑務所内でジェホの地位が危うくなった時、通路ですれ違うシーンでお互い意識してるのに合わない視線のもどかしさに悶絶した
・カチコミの際、扉開けて敵に猛ビンタ後「チャギヤー!!お待たせ!!」って入ってくるところほんと好き
・テンポの良い場面展開の合間にどこか切ない夜の情景のカットが入ってたり急にすしざんまいのCMみたいなのが入ってたりでそういうところもいい
・もともと潜入捜査ものは裏切りと罪悪感からでる出汁が旨いので大好きなんですがこの作品からも大量に摂取できました
・無様なビョンガプ「ジェホのことだとよく喋るな」って言われてたり、しきりに「できてるのか?」って聞いてきたり「惑わされてるんだ」って訴えてたり...わかるよ裏社会でも居場所がなく悔しさに涙を流すことしかできないところに細い糸を垂らしてくれたのがジェホなんでしょ それが利害関係からくる手管だとしても縋り付かずにはいられなかったって ジェホを描写する上でビョンガプの存在が効いてる
・ジェホは初めからヒョンスのことを好きだしとても綺麗なもののように思っているけど同時に踏み躙ることもできてしまうのがそれまでのジェホの人生の過酷さを物語っていてやるせない
・ジェホのヒョンスを見る目が後半になるにつれどんどん甘くなってラストの対峙するシーンではもう「愛してる」って言ってるのが聞こえた気がしたのでソル・ギョングさんありがとう
・裏切られ続けて誰も信じないというジェホは裏切られても殺せないくらい好きなヒョンスと出会えて大勝利だしさらにヒョンスの手にかかって死ねるなんて祝福のようですよ...
・中盤まではジェホの罪悪感と猜疑心とないまぜになった感情が主旋律でそこにヒョンスの信頼が絡みつき後半真実を知ったヒョンスの怒りをジェホのヒョンスへの愛情が彩っていてどうしようもないくらい掻き乱される
・ヒョンスに疑惑をぶつけてボディチェックをするジェホ、痴情のもつれみたいでほんとに惑わされてるなって思うけどそれに対する答えが「俺を信じなくていいけど俺は信じてる」なのでもうジェホは完敗
・ほんと物語冒頭では普通の母思いの青年だったのに碌でもない大人たちにとんでも無いところに連れてこられてしまったヒョンス 銃で決着をつけなかったのはジェホへの憎しみと愛情両方あってこその素手だと思ってます
最後まで観てから見返すと冒頭のシーンで銃による殺害について述べられていてラスト最も罪と向き合わなくてはいけない方法をあえて取ったのだと気付かされる
・警察に三行半叩きつけるのはまあ当然として殺害に使った銃をジェホに握らせているので警察にもどる意思があるのか夜の世界を選んだのか...いずれにせよこの後、ヒョンスが喪失を抱えて生きていくのだと思うとたまらない気持ちになります
ヒョンスの涙が美しくて切ない