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名もなき野良犬の輪舞のlpのレビュー・感想・評価

名もなき野良犬の輪舞(2016年製作の映画)
3.5
昨年のカンヌ国際映画祭で、ミッドナイトスクリーニング部門に出品された今作。パルムドールなどの賞に絡まない部門ということもあり、毎年何が出品されているのか話題に上がることが少ないミッドナイトスクリーニング部門だけれども、実は一昨年の同部門に出品されていたのが、昨年日本で公開されて大絶賛の嵐となった、『新感染 ファイナル・エクスプレス』なのである。その1年後に韓国から同部門に出品された作品の1つが今作(ちなみに韓国からは昨年同部門にもう1作、チョン・ビョンギル監督の『悪女』が選出されています。)ということで、『新感染』を昨年のベスト10に選出した身としては、今作もチェックすることに。

今作はあるチンピラが収監先の刑務所で、麻薬密売組織の幹部と出会い・・・という話。
典型的なノワールものかと思いきや、次から次へと登場人物の秘密が明らかになり、二転三転する展開が見所。特に凄いポイントは、過去と現在を行き来しながら物語を描いているところ。正直最初はまどろっこしい展開が少し退屈だったけれど、絶妙なタイミングで時制を崩すからこそ、二転三転する話の面白さへと繋がっていることが、映画が進むにつれて伝わってくる。この構成の巧さは素晴らしい。

ただ、どんでん返しが続くストーリーは面白かった一方で、どんでん返しをすることが目的になり、人間ドラマの中身はやや練り込み不足な印象を受けた。チンピラと麻薬密売組織の幹部が共通して抱えるトラウマから、主人公の行く末が類推されたり、冒頭とラストの「目」を巡る描写だったりと、要所は抑えられている。ただ、ドラマの主軸に置かれた「友情 VS 使命」の観点から、ハラハラドキドキがあまり感じられなかった。これは話を盛り上げるためのどんでん返しを大量投入した結果、「全員悪人」のように映ってしまったことが痛手かな。

「最高」とは言わないまでも、娯楽作としてこれはこれで面白い・・・と言えるぐらいの位置付けです。どんでん返しが連続するストーリー展開には功罪あるけれど、その巧みさだけでもアドバンテージは充分にあります。
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