音楽は時に映画の主役にすらなり得る、ということを証明するドキュメンタリー。改めて観直したETのラストシーン、今まで泣いたことなかったのに、泣かされた。自分でも驚いた。
「オーケストラ中心のスコアから電子音楽家にも門戸が開かれた」近年の変化から、トレント・レズナー&アッティカス・ロスへと流れる展開はとても気持ちが良かった。だが欲を言えば、その先が端折られてしまったのは個人的な心残りだった。「映画音楽はすなわち実験である」という劇中の言葉をそのまま実践している、ヨハン・ヨハンソン(合掌)やらマックス・リヒター、ミカ・レヴィなんかの近年の活躍は、まさしく映画音楽が今後向かっていく未来の一翼を担っているはずだからである。
そもそも、キリがない。こんなにも奥深い映画音楽の世界、たった90分あまりでは到底語り尽くせないのかもしれない。言うなれば今作は「すばらしき (英語圏の) 映画 (のオーケストラ) 音楽たち」。そう思えば、神や伝説とよばれる巨匠たちの偉大な功績を讃えるドキュメンタリーとして、見応えのある作品だった。映画を観終わって入った劇場のトイレで、さっき観た映画のテーマ曲を口ずさんだ経験なんかがある人は必見だろう。