MikiMickle

JUNK HEADのMikiMickleのレビュー・感想・評価

JUNK HEAD(2017年製作の映画)
4.2
堀貴秀監督が40歳前から独学で撮影を初め、2009年から4年の歳月をかけて30分の短編を完成させる。クラウドファンディングで続編の制作費を募集するも失敗。後に出資者が見つかり、計7年の歳月をかけて数人のスタッフと共に作り上げたというストップモーションアニメ。各国の映画祭で受賞し、ギレルモ・デル・トロも絶賛したという事でも話題になっている作品。

ストーリー。
環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!(HPより)

まず、自主制作とは思えない作り込みと完成度に感服しかない。素晴らしい出来にため息が出てしまう。舞台となる地下の世界観は、ミニチュアとは思えない精巧さと広大さ。工場・廃墟好きにはたまらない錆とパイプと鉄の絡まり合いであるし、まるでバンド・デシネの様な空間演出には近未来SFの良さが存分に出ていて鳥肌もの。パンフによると、メインとなる村の舞台を作るだけで6ヶ月かかったそうだ。

考え尽くされたであろうカメラアングルやライティングも、元映画素人が独自で作ったものとは到底思えなかった。

ストーリーとしては今作はまだ3部作の1作目という事もあり、シンプルかつストレートだが、そもそもの設定がヘビーでもあり、テーマも重みがある。

気持ち悪くもキュートなキャラクターたちは、時にベタなアクション映画のように、時にコントのようにドタバタを繰り返し、微笑ましい笑いを届けてくれる。どこか抜けていて、どれもこれも非常に可愛らしい。
グロテスクなクリーチャーたちまで可愛く思えてくるのもストップモーションアニメの良さなのかもしれない。

一方で、広大な地下世界が一体どこまで続くのか分からないのと同じように、地下へ地下へと下っていくのと同時に、物語も更に深いものへとなっていく。この陰と陽の混ざり合いが心地よく、クセになってしまう。登場人物たちの不可思議な喋り方もまたクセになる。

不気味なディストピアの世界にどっぷり入り込む事が出来て、尊敬と感謝を感じてしまった。こういった作品には心から応援しているし、早く続編が観たい!!自費出版のパンフの情報量も凄まじく、まるでストップモーションアニメの指南書的な作品。これが丸々続編への予算へと繋がるらしい。 エンドロールの撮影風景もまた見もの!! 感動しました。
MikiMickle

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