ちろる

世界でいちばん長い写真のちろるのレビュー・感想・評価

世界でいちばん長い写真(2018年製作の映画)
3.9
所属する写真部も幽霊部員で、学校でも目立たない存在。

145mのパノラマ写真が撮れる改造カメラを従姉妹のリサイクルショップで見つけたひろのぶ。
このカメラがひろのぶの青春を、ガラッと変えてしまう。

どこかで輝くことを諦めていた。

「ひまわりが太陽追いかけるの、成長期だけなんだって。」
じゃあ、そこで太陽を追いかけるのを忘れたひまわりたちは成長すらできなくなるのだろうか?

一枚の中に時間が流れる不思議なカメラ
何かが変わりそうな予感でワクワクしていた。

このタイトル登場する“長い写真”とは、アナログカメラを改造した特殊なカメラ。同じ場所で何回転もしながら撮影するカメラで、このカメラの性能を試す前半では広大なひまわり畑の半日の物語をたった一枚の写真に収めてくれるわけだが、これが思った以上にに情緒的で感動する。
この美しい、まるでストーリーのような写真が撮れるカメラを手にしたひろのぶが、さてどう変わっていくのかがこの映画のメインでもあるわけだが、この脚本でリアルだなーと思うのは、主人公のひろのぶ、自分を変えてくれそうな存在(要するにカメラ)と、せっかく出会ったのにのらりくらりとしているところ。
なにかガジェット得たからって消極的な人間がそう簡単に変わらないし、変わるのは怖いし、そんなわけで従姉妹のあっちゃんをはじめとするこのひろのぶを想う友達の背中を押す手があってようやく重い腰をあげて、青春に飛び込んでいく様子が妙に共感できてしまった。

圧倒的にキラキラした作り物のもうな青春ストーリーなんかではなく、本当に自然体な作品である本作。
主役の高杉真宙くんはビジュアルだけであれば絶対的カーストトップなのに、みるからにおどおどして女子をイラつかせるひろのぶを見事に演じていたし、セクシーだが、男勝りなあっちゃんを演じた武田梨奈さんや、いつもプンプンしながら不器用にひろのぶを見つめる三好を演じた松本穂香さんなどの演技力のおかげであることは間違いない。
特に三好の不器用さは健気すぎるほどで、あのラストで疾走するシーンだけは彼女が主役と言っても過言ではない。
無駄に泣かせようとせず、登場人物たちの自然な笑顔の中で自然と涙がこぼれる丁寧な脚本に、こころから拍手を送りたいです。
ちろる

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