ヨッシー

クワイエット・プレイスのヨッシーのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
4.5
『この世界で生き残る自信ないわ😂』

監督としても活動する俳優ジョン・クラシンスキーの監督最新作。

盲目だが鋭敏な聴力を持つ謎のクリーチャーによって滅ぼされた世界で生き残った家族の“決して音を立ててはいけない”サバイバルを描く。

出演はエミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ。

去年大ヒットしたホラー映画『it/イット “それ”が見えたら、終わり』を超える大ヒット&高評価ということで注目の1作。
個人的にはマイケル・ベイが製作にいるのも注目のポイントだったかな。まあ今回の作品にベイはあんまり影響ないと思うけど。

予告とかで言われてる“音を立ててはいけない”というホラー映画だと2016年公開の『ドント・ブリーズ』を思い出す人が多いだろう。内容的にもかなり似ているところは多いし、監督自身が本作を製作するにあたって鑑賞したと言ってる。
『ドント・ブリーズ』もアレはアレでかなりの傑作で僕も大好きなホラー映画なんだけど、今回の『クワイエット・プレイス』の方が個人的にはちょっとだけ好きかな。

本作を内容を簡単に言うと、この手のモンスター映画では割と定番な「モンスターの近くで息を潜めて隠れる人間たち」というシチュエーションを丸々1本の映画にしたような作品。
こういったすぐ近くの化け物から逃れられるかというハラハラ展開自体はもはやお約束のようなものなんだけど、そのシチュエーションをより広げて1本の映画にしている。

まずはなんといっても冒頭が素晴らしい。
最初は荒廃した街の雑貨屋を漁る主人公家族から始まり、なんの説明もなくとも彼らがいかにヤバイ状況にいるかがしっかり演出できている。薬を探す動きがとても慎重だったり、おもちゃを落としそうになっただけで全員がビビってたりととにかく一切の音を出せない状況であることを演出している。
そんな状況で長女のちょっとした優しさがのちに悲劇を起こしてしまうこのオープニングで一気に話に引き込まれていった。

その後の決して音を立ててはいけない生活も本当に些細なミスが死に直結する危険を常にはらんでいて一切気を抜けない緊張感にあふれている。
音を立てないように細かくKUFUした生活も観ていて面白い。

何より音を奪われた世界というのは考えただけで恐ろしい。生物が生きる上で当たり前のように出している物だからそれなしに生きるのは非常に厳しいし、音を出すことができない世界なんか我々には想像もできず、仮にそんな世界にいたとしてら正気を失ってしまいそう。

一番インパクトがあるのはやはり中盤のエミリー・ブラントの出産シーン。出産時の激痛と迫ってくるクリーチャーの恐怖の二つを同時に耐える姿はとても痛々しい。その溜まりに溜まった苦しみを解放する瞬間がまた良い。エミリー・ブラントの圧巻の演技力もあって素晴らしいシーンになってると思う。

その後のクリーチャーとの静かな、しかし激しい攻防戦もドキドキハラハラの連続で全く退屈しない。
『ドント・ブリーズ』と同じで前半のうちに家周辺に何があるのか、位置関係なんかをちゃんと見せているあたりもしっかりしてる(その分先の展開が読め易くなってしまうという副作用もあるが)。

そして、家族にドラマとしてもしっかり厚みがある。
あの絶望的な世界で未来に何かを残そうと奮闘する夫婦、過去の悲劇に負い目を感じる長女、父から生き抜く術を学ぶ長男とどのキャラにもしっかりとしたドラマがあり、終盤はそれぞれが死の恐怖を乗り越えようと奮闘している。

確かにツッコミどころが結構ある作品ではある。
一番のツッコミどころはあのクリーチャーだろうね。少なくとも作中の行動を見てる限りでは世界を滅ぼせるほど強そうには見えないちゃ見えない。
音に反応するといってもそれだけならいくらでも対処法はありそう。しかもそこまで耳がいいわけでもなさそうだしね。まあ人間の呼吸音とかまで聞き取れちゃったらどうあがいても人類滅亡だからそれは仕方ない。

ただ、一応体がめっちゃ硬いという描写があるから多分銃とか一切聞かなかったんじゃないかな?それだけでめちゃくちゃ手強いと思うよ。
音に反応すると気づいた時にはすでに遅かったとか、凄まじい勢いで繁殖してとてつもない数になっちゃったとか無理矢理解釈することはできるし、その辺は作者の匙加減でどうとでもなるからね。
それに今回はあくまで主人公一家に焦点を絞ってるからそういった大局側は別になくてもよかったと思う。

あと、本作を見るときは観客もなるべく静かに見ようという風潮があるみたいだけど、それだけ集中して見る映画だと思わせた時点でこの映画の勝ちじゃね?

個人的にはラストの締め方がすごく好き。最後の銃を持って「あいつらを駆逐してやる!」という感じにエミリー・ブラントがすごくキレが良くて良い締め方だった。

ただ、アメリカの方での大ヒットを受けて続編決まったみたいだけど、ぶっちゃけどうするの?
だって、普通にこの話の続きを作ってももうアイツら怖くないじゃん。正直続編にしても全く別視点のストーリーにしてもどうなるのか予想できない。

どちらにしても本作は劇場でなるべく人が入ってる状態で見るのが一番良い作品なのでなるべく早いうちに劇場に行くのがオススメです!
ヨッシー

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