ヨッシー

パラレルワールド・ラブストーリーのヨッシーのネタバレレビュー・内容・結末

1.5

このレビューはネタバレを含みます

『タイトルを使ったトリックは面白いけど...』

東野圭吾の同名小説を実写映画化。

研究者の崇史は親友の智彦にかつて自分が恋した女性を恋人として紹介される。しかし、ある日目覚めると彼女は自分の恋人になっていた。

監督は『宇宙兄弟』『聖の青春』などの森義隆。
出演はKis-My-Ft2の玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太など。

毎年何本も映画化しているほどの人気の東野圭吾原作の映画。
でも個人的には東野圭吾原作の映画はそこそこ見てるけど、どれもイマイチという印象。原作はどれも読んだことはないから、映画化の仕方が悪いのかもしれないけど、少なくとも映画化された作品はどれも微妙なものばかり。
今回の『パラレルワールド・ラブストーリー』もまさしく東野圭吾作品といった感じの要素は数多く見られる作品ではある。

本作の構造は結構複雑。
本作の主要人物は3人で、主人公の玉森裕太演じる崇史、その親友の染谷将太演じる智彦、そしてヒロインの吉岡里帆演じる麻由子。
前半は崇史と麻由子が付き合っているAルート、智彦と麻由子が付き合っているBルート、それとはまた別のCルートの3つのエピソードが並行して進むが、これがちょっと分かりにくい。それぞれのシーンがどのルートなのかぱっと見では分かりづらく少し混乱する。一応画質を変えたりして違いを出してはいるけど、それでも難解。

ただ、この3つのルートを利用したトリックは面白い。
このAルートとBルートはまさしく一般的に知られるパラレルワールド的なもので、同じシーンなんだけど智彦がいるパターンといないパターンを見せてくる。
しかし、本作の話は実はパラレルワールドは全く関係がない。今回のオチは記憶を改竄することができる装置によって崇史の記憶が書き換えられていて、書き換えられた記憶がAルート、本当の記憶がBルートということになる。
普通に考えるとこれはタイトル詐欺とも言えるが、本作は『パラレルワールド・ラブストーリー』というタイトルからパラレルワールドの話という先入観を持って見てしまうが、それこそが壮大なミスリードになっている。作品の1番の入り口であるタイトルそのものを使って視聴者を騙すトリックは非常に面白い。
ただ、やはりパラレルワールドとは全く関係のない話だからその手の作品を期待して見ると肩透かしを食らうことになる人もいるかもしれない。

また、タイトルを使ったトリック自体は面白が、作品全体としてははっきり言って面白くはない。
前半は3つのルートそれぞれの話を特に物語上の目的が分からないまま淡々とと続けるだけでかなり退屈。ルートの入れ替わりや時系列の入れ替わりもあって分かりにくい上に退屈なのはキツい。

しかも、この肝心のトリックも記憶書き換え後の未来の物語であるCパート(というよりはA、Bルートが回想シーン的な扱いと言った方が正しいかも)のせいで途中でなんとなく分かってしまう。せっかくの面白いトリックも読めてしまっては意味がない。

結局のところ、今回の話は記憶を書き換える技術をめぐる話ではなく、崇史達3人のドロドロの三角関係の物語でしかない。
しかも、主人公の崇史は結構下衆な奴で、智彦と麻由子が恋人関係なのを承知の上で麻由子に告白したり、果ては家に押しかけて(半ば強引に)寝たりしている。
これで崇史と智彦が修羅場になるのかと思いきや、何故か智彦は自分の記憶から麻由子の事を消して「2人で仲良くやりな」みたいな事を言い出す。意味がわからない。
最終的に崇史は自らの行いに反省することも罰を受けることもなく、麻由子とともに記憶を消してやり直して再び結ばれてハッピーエンドなんて都合が良すぎる。『ういらぶ 。』といい『トラさん 僕が猫になったわけ』といいなんでジャニーズ主人公はこうもクソ野郎のくせにこんなに甘やかされたようなやつばっかりなんだ?イケメンなら何やっても許されるの?

記憶書き換え装置についても、智彦が実験で眠ったままの後輩を救うために自ら実験台になるのはまだ分かるけど、そのデータを崇史に密かに託す意味がわからない。
例えば、上司や研究所の上層部が自分の研究を悪用しようとしてる事に気付き、崇史なら自分の研究を正しく使ってくれると信じて密かに託すとかならわかるけど、別にそんなこともなく、結局データは普通に上司の元に渡って終わり。仮に記憶を書き換える技術があった時の利用法や危険性について触れられることは特にない。
とにかくこのクライマックスの各キャラの行動は意味不明なところだらけ。

せっかく面白いトリックなのに他の部分がガタガタ過ぎて全体的には酷いし退屈。
原作は読んでないから原作が悪いのか映画化の仕方が悪いのかは分からないけど、少なくとも1本に映画としてはあまり褒められた出来ではなかった。同じ東野圭吾原作の映画なら去年の『人魚の眠る家』が1番オススメかな。
ヨッシー

ヨッシー