とても奇妙な映画体験。
これが濱口ワールドなのか。
今まで食わず嫌いしてたけど、観てみてびっくりする変な味付けが、とても豊潤な映画的な体験を提供してくれる。
とりあえず恋愛ものでありながら、ホラーでもあり、現代日本を現す表現にも見えてきて、何重にも重なった意味がひしめき合っている。
はっきりとドッペルゲンガーホラーの味付けがされていて、それが彼の師匠に当たるであろう黒沢清と似ていて本気で怖くなる瞬間がある。
また主演の東出と唐田の不倫スキャンダルもノイズスレスレになりながら、メタ的に重なる背徳感も加わって多層的になったと思う。
途中の演技論で、自分に酔ってるだけ、という話が出てくるが、これは本作で描かれる恋愛のことと東北のボランティアについても言及してるのではなかろうか?美しく見えるものも実際に蓋を開ければ、見え方は違ってくる。最悪な出会いだった役者同士が未来には最初の印象とは違った結末になることが物事の表裏一体を現している。
とてつもなく多層的に意味や象徴を塗りたくっているのて、意味が分からなくても、とても重厚な味わいがある。
最後にこちらを見つめる二人の視線が見据えてるのは何なのか?それを考察することが醍醐味。
次はドライブマイカーを楽しみにしながら、濱口メソッドに思いを馳せよう。
サブカルに飽きてきてスーパーヒーロー映画しか観なくなってきた僕に、まだ映画を見る楽しさを思い出させてくれた。
それほどに映画でしか到達出来ない表現をしている。