濱口竜介監督の映画が観たくて鑑賞しました。
理性では止められない、一瞬の迷いや突き動かされる感情があることが丁寧に描かれていました。
自分にとって何が大事なのか分からなくなってしまうことがある。
その時は最善だと思ったことが、冷静になってみると間違いだと気付くこともある。
その判断が人を傷つけ、取り戻すことができない禍根を残してしまうことでも。
自分の気持ちに正直に生きたとしても、それが必ずしも幸せに繋がるとは限らない。
「ドライブ・マイ・カー」では自分の気持ちに正直に生きてこなかった後悔に絶望するが、
本作では自分の気持ちに正直になったことで亮平に絶望を与えてしまう。
が、また亮平の元に戻ってきたのも正直な気持ちである。
朝子は亮平を麦の思かげとして愛するのではなく、このことがきっかけとなって亮平を亮平として一生愛し続けられると思う。
「一生許さない!」と亮平は言うが、そんな朝子を許す時が来ると私は思います。
玄関のドアを開けたことは、許す気持ちの現われなのかと…。
雨降って地固まるではないが…。
正直に本音をぶつけることは大事だと思うけれど、話した方が良い事・話さない方が良い事、タイミングなどその難しさも感じましす。
不倫問題で微妙な状態になってしまった感じの映画ですが、配役の皆さんが素晴らしく、濱口監督らしい良い映画でした。