にく

アサルトガールズのにくのレビュー・感想・評価

アサルトガールズ(2009年製作の映画)
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『アサルトガールズ』。宮崎的「運動」が導く「明快さ」に対する懐疑を隠そうとしない押井は、「停滞」が呼び込む「観念」をこそ重視する。砂漠の野営地にあるはずもない食パンや生卵、蝸牛の存在は、英語を棒読みする女達の鈍重な身体によって肯定され、かかる世界を書物に目を落す二宮像が象徴する。
アニメにおいては描き込みを得意とする押井が、実写となった途端に情報の削ぎ落としを志向する。恐らくそれが映画に押井印を刻むための彼の作法なのだが、犬、人形、鳥、漢字といったお馴染みの記号は、作品が「観念的」であることを強調するばかりで、観念の内実については一向に語ろうとしないのだ。
いや、まぁ、今回の押井守には、はっきりと「金返せ」といいたいですね。彼の作家論を書きたい人たちのためだけに映画があるわけではないっていうね。
もう1つ。押井の実写作品における情報の削ぎ落しについてはパンフレットで氷川竜介も触れている。ただそれは彼のいうように観客への「すべての情報提示をコントロール下に置く」ためというより、押井の欲するような戦後風景が最早存在しないというところに起因するのではないか。
だから本作では大島三原山の「砂漠」ばかりが前景化されるのであろう。さもなくば、『アヴァロン』に見られるように、ヨーロッパ19世紀建築の映像を流用するという手もある。一方アニメにおいては、『パトレイバー』でそうだったように、失われた風景をいくらでも描き込むことができるというわけだ。
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