けんぼー

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のけんぼーのレビュー・感想・評価

3.8
2020年鑑賞5本目。
まるでノンフィクションな「社会派」作品。夢と現実の間で生きる親子のがむしゃらな愛情。

僕はディズニーリゾートが好きで、世界最大のディズニーリゾートであるフロリダディスニーワールドにも人生で一度は行ってみたいと思っている。
そんなディズニーワールドの近くのモーテルが舞台という今作は前から気になっていた。

ディズニーワールドのすぐ隣に建っている「マジックキャッスル」という名のモーテル。その名前とは裏腹に、そこに住む人々は経済的な問題を抱えた人が多く、「夢」や「魔法」とは正反対の現実の中を生きている。この対比がかなり印象的。まるでノンフィクション作品のような印象を受ける撮影方法も特徴的だった。また、子役たちの演技力の高さがあってこそ成立するリアルさ。

主人公の6歳のムーニーとその母親でシングルマザーのヘイリーは「マジックキャッスル」の中で裕福ではないがそれなりに楽しい日々を送っているのだが、だんだんとその生活にも「現実」が押し寄せる。

因果応報、自業自得と言ってしまえばそれまでの物語なのかもしれないが、そんなに簡単に割り切ってしまえないほど、ムーニーとヘイリーの楽しそうな姿が微笑ましい。

決してハッピーエンドではないが、最後のシーンは「絶望の中の希望」「現実からの逃げ道としての幻想の世界」を感じることができる良いシーンだった。

人によってはムーニーやヘイリーにイライラしてしまう人もいると思う。そういう人にとってはあまり楽しめないし、「ディズニー」はほぼ関係ないので、それ目当てでも期待を裏切られるかもしれない。
パッケージや「感動のラスト」的な謳い文句で興味を持った人も要注意な完全に「社会派」な作品。

2021/1/10鑑賞