あくとる

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のあくとるのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

冒頭から子供達が楽しそうに遊び、イタズラしている様が実に愛らしい。
しかし、その裏に見え隠れする厳しい貧困の現状が、キラキラした子供達の笑顔によってより一層引き立ち、観客の心に突き刺さる。
そして後半に行くにしたがって"陰"がどんどん濃くなっていき、見終わった後には重い気持ちにさせられる。
(邦題サブタイトルが"真夏の魔法"って…)

誉めるところだらけの作品でしたが、特筆すべきは子供達の自然すぎる瑞々しい演技。
どうやったらこんなに"子供らしい子供"が撮れるのか不思議になるほどの自然さです。
いつも笑顔でキュートなムーニーがときどき見せるシリアスな顔とセリフが胸を打ちます(「大人が泣き出すときはわかるんだ」って…泣)。

子供たちに限らず俳優陣は総じて素晴らしかったです。
母親ヘイリー(ブリア・ヴィネイト)の常に強気な振る舞いと大人としての未熟さ。
ホテルでの別れの食事シーン、笑顔のムーニーに対してヘイリーの表情が…泣

子供達を叱りながらも暖かく見守るボビー(ウィレム・デフォー)。
デスクの下に隠れたムーニーたちを見つめるあの笑顔…泣
どのシーンでもウィレム・デフォーは表情がいちいち素晴らしい。

また、撮影も実に美しい。
特に夕暮れのシーンは印象的で、ボビーがタバコに火をつけると、数秒の間を空けて各部屋のライトが一斉につくシーンは120点。

ラスト。
母親ヘイリーは確かに親として失格かもしれないし、最後の処遇もムーニーのためには正しいのでしょう。
それでも自分はヘイリーを一概に否定する気にはどうしてもなれません。
抜け出せない根深い貧困はヘイリーだけの責任じゃ決して無いはず…

ムーニーとヘイリーの今後を考えると辛く、どうかまた二人で仲良く暮らしてほしい…
離れ離れになったとしてもムーニーにはジャンシーのことを忘れずに育ってほしい…
気づいたときには、まるで実在の親子を見ているかのように感情移入していました。

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その他良かったシーン
・アイスを買うためのお金を恵んで貰おうとするムーニーを見てドン引きするジャンシーの顔が最高。
・子供達が遊んでいると唐突に現れる不審者を容赦なく追い出すボビーが素敵…なのだが、それと同時に、モーテル敷地内であっても常に危険と隣り合わせな劣悪な環境であることをしっかり認識させる。
・最初はヘイリーといっしょで楽しそうだったお風呂シーンが後半では一人になるのが…
一人遊びをするムーニーの姿は見ていて辛い…