カラン

ポルトのカランのレビュー・感想・評価

ポルト(2016年製作の映画)
4.0
心を傷めたアメリカ人の男とフランス人の女が、ポルトで、ある夜愛し合う。洒落た作品で、ポルトの石畳みの街並み、朝靄の中をカモメが飛び交う空へと開かれた部屋でのラブアフェアも良い。アントン・イェルチンも彼女もステキだし、冒頭と最後のカットのくっついてるし離れてる2人の時が止まったような表情も切なくなるし、ノスタルジックで少し狂った時を想起させる目の荒い映像もよい。マルグリット・デュラスのテクストのように、街を歩き回るのも、居場所のない2人の気持ちを良く表している。マノエル・ド・オリヴェイラの古風なというか、ペダンティックな演出よりもずっと好みだし、ポルトガルに行ってみたいという気持ちにさせてくれるのだが・・・。

彼女のほうは心を病んでいたという設定なのだが、全然、そう見えない(爆)。この設定は2人の関係のキモになるところだから、重要だと思うのだが、どうだろう?孤独とか心の病が愛を煽るし、だからそういう2人はどんなに求め合っても愛し合い続けることが出来ないわけでしょ?孤独が深すぎて、初めて会った日に愛しあうけど、それ以上愛し合い続けられないんでしょう?そういう哀しい未来が薄く透けている分だけ、一晩中抱き合うことにもなるのでしょう?

その一方で、声はいつものしゃがれ声だし、いつになくくたびれた見たくれのアントンは、心の痛みを良く出していて、話しをする前から女を永遠の愛の位置に据えてしまうのも、あり得ることだと、ちゃんと共感できた。
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