こしょう

ニッポン国 vs 泉南石綿村のこしょうのレビュー・感想・評価

ニッポン国 vs 泉南石綿村(2017年製作の映画)
3.0
アスベスト被害について国の責任を問う原告団を群像形式で追ったドキュメンタリー
同じ日に観たれいわ一揆も同じ群像劇だったが、こちらの方が面白かった。というのは、原告団各人の主張に細かいところの違いはあるが大きな目的は国に責任を認めさせることにあること、生死のかかった切実さがあること、加えて良いか悪いかは置いておいて柚岡という人物が軸になっていることだと思う。
良いか悪いか、というのは、柚岡氏の(親が石綿工場の経営者であったため)被害者を産んでしまったという自責ゆえの過激さと、最高裁判決が出た後の国の役人に対しての態度である。
役人が「責任者(首相や大臣)を出せ」と言われても出せるはずはないし、やむを得ずかもしれないが裁判というシステムに乗ったにも関わらずそのシステム外のことを無理矢理通そうとするからである。柚岡氏の心情は分かるが、役人はれいわ一揆でフューチャーされていた安冨氏が言っていた立場主義の最たるものであり、あの恫喝に近い物言いは良いものではない。裁判というシステムに疑問を抱くなら、現在のシステム(選挙など)を経て違うシステムを作るか、テロルによって破壊するかしかないのだが、柚岡氏の行動はテロルに近いものだと私は感じる。

とはいえ、10年近い期間のドキュメンタリーであり、原告団メンバーが次々と亡くなっていく様は何物にも代えられない迫力があるし、普通の映画にはない意図せず写されるものの楽しさがあること、ぼんやりとしか知らなかったアスベスト被害の具体例を知ることができたことから、3時間半を楽しむことができた。
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