ニッポン国 vs 泉南石綿村の作品情報・感想・評価

ニッポン国 vs 泉南石綿村2017年製作の映画)

上映日:2018年03月10日

製作国:

上映時間:215分

あらすじ

大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその親族が、損害賠償を求め、国を訴えた“泉南・アスベスト国賠訴訟”。その8年にわたる闘いの全てを記録したドキュメンタリー。

監督

「ニッポン国 vs 泉南石綿村」に投稿された感想・評価

山形では観る事が出来なかったので、ようやく観る事が出来た。前半、後半では雰囲気が替わり、違う作品みたいだった。
k

kの感想・評価

4.8
普通の人をドキュメンタリーにしてもこれほど面白いとは。さすが原一男。3時間半を感じさせない。
かす

かすの感想・評価

2.0
運動とは何か。
彼女彼らはなにに怒っていたのか。
原一男はなにに怒っているのか。
全てのことは考えるべきで考えないべきだ。
面白い映画を作るという欲求は驚くべきほどなわがままな感情でしかない。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.8
【東京フィルメックス観客賞受賞!これはシン・ゴジラならずシン・カズオだ!!】
『さようならCP』『ゆきゆきて、神軍』『極私的エロス・恋歌1974』『全身小説家』作るドキュメンタリー皆伝説レベルの狂気を帯びている鬼才・原一男。彼は初の劇映画『またの日の知華』で映画芸術ワーストテンに選ばれる黒歴史を作ってから暫く音沙汰なかった。しかし、密かに彼はドキュメンタリー映画を作っていたのだ。今回のテーマは大阪・泉南アスベストの元労働者と国との訴訟バトル。製作期間8年半に及ぶ壮絶な日々の末、遂にシネフィルの前に再び姿を現した。一般公開は2018年3月ユーロスペース他にてですが、今回ブンブンは東京フィルメックスで原一男渾身の215分を刮目してきました。果たして...

☆『ニッポン国VS泉南石綿村』概要
2005年、大手機械メーカー・クボタでアスベストによる健康被害が報道された。大阪・泉南地域の元アスベスト工場で働いていた人々は、国相手に国家賠償請求訴訟を起こした!原一男監督は、大阪・泉南地域の人々と国との闘いを8年間追い続ける...

☆原一男節全開!
東京フィルメックスで観客賞を受賞したのも納得の大傑作だった。まず、個人的に本作は自分の人生とリンクしていた。丁度、ブンブンが小学6年生の時、中学受験対策でクボタショックは習った。そして、原一男監督が本格的に本作を撮り始めた頃、ブンブンはアップリンクで『ゆきゆきて、神軍』を観て衝撃を受けた。なので、本作で描かれる時の流れと自分の人生をどうしても重ねて観てしまった。これだけで個人的に熱くなる。

さて、内容の話をしよう。本作は前半2時間はインタビュー形式で、訴訟の背景や泉南の歴史が紐解かれていく。そして後半90分は泉南の人々と国との訴訟バトルに重きが置かれている。上映時間が3時間半もあるので、ゆっくり進むのかなと思っていると、これが『この世界の片隅に』レベルでスピーディーに話が展開していく。ポンポンポンポン時代は進み、あっという間に2012,2013,2014年と進んでいく。それにより、次々と泉南の人々が病により逝去していく様子が効果的に見える。これぞ原一男の超絶演出力。国は賠償金の支払いを少しでも遅らせようと悪あがきをし、泉南のアスベスト被害者が亡くなるのを待っていることが観客に伝わってくるのだ!

Q&Aでも彼はお茶目に語っていたが、彼は正義とかそういうの云々の前に「面白い映画を作りたい!」という意志がある。だから、容赦せずに泉南の人々にカメラを向け、煽りに煽る。だからこそ、シリアスでキツイ内容にも関わらず爆笑のシーンも無数にあり、3時間半があったいう間に感じるのだ。そう、これは知られざる社会問題も学べる極上のエンターテイメント作品なのだ!

☆シン・ゴジラならずシン・カズオだ!
そして、なんと言っても本作が面白いのは後半の泉南と国家の訴訟バトルシーン。これは、ゴジラ目線から描いた『シン・ゴジラ』に見えます。怒りと憎悪の塊で迫ってくる泉南の人々。各省庁のドンは、下っ端の下っ端に彼らのお守りを任せる。下っ端だから、規則規則で身動きが取れず、泉南の人々にフルボッコにされる。この様子が非常に笑え、白熱するのだが、これぞ日本の役所!という強烈な風刺も観客に突きつけてくる。

泉南の人々にフルボッコにされ今にも自殺しそうな目をしている省庁の下っ端からは電通で自殺した人の面影も浮かび上がってくる。まさに、自分の持ち場でしか動けない日本のお役所の辛さが強烈に皮肉られていたと言える。

やはり、本作を観ると、『シン・ゴジラ』は単なるファンタジーではなく、現実を描いていたことがよくわかる。そして、原一男はシン・カズオとして生まれ変わり、ドキュメンタリー監督としてのSIN、国が抱えるSIN、泉南の人々のSINと徹底的に向き合い、この大傑作を産み落とした。

そんな『ニッポン国VS泉南石綿村』は来年上半期注目の作品。『ゆきゆきて、神軍』に惹かれた方は、是非、このシン・カズオに挑戦してみて下さい。
eigajikou

eigajikouの感想・評価

4.5
#原一男監督 23年ぶりのドキュメンタリー映画新作。長尺気にせず是非観て欲しい作品。監督は普通の人たちを写して面白い映画になるか心配だったそうですが、尖ってない人たちの生き様だからこそ引き込まれる映像の強度が素晴らしい。柳下美恵さんの映画に寄り添う音楽も素敵。
アスベスト、ニュースで聞いて存在は知っていた。そして多くの場合、過去に起こった悲劇という印象を与えられていた。
しかしこの作品はそんな愚かしい印象をひっくり返し、アスベストが明治以降の日本の現在進行形の問題であることを十分すぎるほどに示した、と思う。
yuuki

yuukiの感想・評価

3.0
原一男の作品はあまり観たことがないけど、対立の片側に(過剰に)監督が立ち、油のように介入している作品はドキュメンタリーとしてあまり好みじゃない。

過度に造られたキャラクターたちは愛おしく、問題についてキチンと向き合わなくてはならないと重く感じさせた。

スマホ世代が初めてフリーアプリを用い、SNSに投稿した動画のような作り。
比較的長めの作品でありながら、飽きさせない。
昔の記録を今になって編集した感が上手く出されていて最後まで観やすい。

他の作品も観てみたい。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017の目玉の一つ。原一男の新作である。

アスベストを肺に吸い込むと長期の潜伏期間を経て肺線維症、肺がん等を引き起こす。2005年にクボタの工場周辺住民にアスベスト疾患が発生している事が報じられたのをきっかけにアスベスト健康被害が問題に。石綿(アスベスト)産業で栄えた大阪泉南地域の労働者、家族が国家賠償請求訴訟を起こす。最高裁判決まで8年に渡る長編ドキュメンタリー。


215分の長尺であるが全く飽きさせない。前半で原告及び家族などのインタビューを中心にアスベスト被害の深刻さを描いていくのだが、これが笑えてしまうのだ。泉南の人達は肺疾患で苦しい思いをして事実を認定しない政府に激しい憤りを感じているが、どこか呑気なのだ。ある意味、疾患、訴訟も含めた上で日常に消化してるのかも。


肺がんで亡くなった夫の人柄を語る涙ぐみながら語る妻に原一男が質問する。

「お酒も賭け事もしない真面目なご主人だったんですね」


「...賭け事はやったの。競輪、競馬、パチンコは一通り。パチンコで勝つと5000円くれたの。負けると一言も話さないからすぐ分かったわ」

と語るシーンは場内爆笑。いい夫婦だったんだなあと、それ故にアスベストで死なせることもなかろうにとも思う。


後半から事態は急展開。呑気なお人好し揃いの原告の中で唯一の問題児柚岡さんの登場。遅々として進まぬ裁判に憤り、アポなしで厚労省に行き大臣に会わせろと行動する。弁護士に無断で!本件の結果は知っていたが、それでもひやひやする展開。おま、そんな無茶やって責任とれんのかと。


ただ、原一男にとっては願ってもない展開で後半は柚岡さんを主人公に厚労省の役人への詰問、原告と弁護団との対立とめまぐるしい。

単純に国だけを悪役に描いている訳でもなく原告達の暴力性、そしてそれを煽る原一男の悪意までむき出しにしてて非常に面白い。


ただ、個人的に一番印象に残ったのはクレーマー柚岡さんではなく、前半のインタビューに出てた夫婦(名前は失念)。

夫が工場で働いて肺疾患に。妻はそれに怒って訴訟チームに入るのだが夫はそれに反対する。


「俺はアスベスト工場で一生懸命働いてお前と子供達を食わせてきた。お前はもっと金が欲しいのか。俺はお前にひもじい思いをさせていたのか」

「そうじゃないの。お父さんあんなに一生懸命働いてきたのに、こんな目に遭うなんて酷いじゃない。私はお金が欲しいんじゃないの。こんな事をした人達に謝って欲しいの」

「アスベスト工場がなかったら、俺はお前達を食わせてやれなかった。だからそんなに悪くいうな」


↑多分、こんな感じの会話だったと思う。夫をこんな体にされた奥さんの怒りも分かるし、自分が一生懸命働いた事まで否定されてる気分になってるご主人。本当に普通の夫婦の会話なんだけど、ドキュメンタリーじゃなかったら絶対出てこない会話である。国が悪い、工場が悪いとかそんな単純な話で割り切れないのだ。観終わった後も色々考えてしまう映画である。来年3月公開予定なので是非観ていただきたい。
これは傑作。3時間半全然飽きなかった。前半は泉南石綿村の工場で実際に働いていた被害者の労働者たちやその家族ひとりひとりにインタビューしていき、後半はタイトル通り原告が本格的に国と闘う様子を描いている。やっぱり後半の勢いが本当に凄くて、原告たちの『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三的な過激発言とか行動から目が離せなかった。国の暴力性と原告の暴力性どちらも描いているのが凄い。一応映画では「終わり」(裁判の終結)が描かれるけれど、それは同時に原告にとっては「はじまり」なのかもしれないと思った。ラストは涙が止まらなかった。素晴らしい。
梅田

梅田の感想・評価

4.3
原一男の新作はアスベスト公害の国賠訴訟を追った200分超の大作。国の不作為を糾弾する筆圧の強い作風だけど、同時に笑えるシーンも多くてびっくり。夫を石綿肺の合併症で亡くした直後の原告の一人にインタビューするシーンで、「あんなに真面目な旦那さんで、お酒も飲まないしギャンブルもしなかったんでしょう?」という監督の問いに「賭け事はやってました、競馬競輪麻雀パチンコ……」と泣きながら返すとこは場内爆笑だった。「笑い」の多さはこの映画の特徴の一つで、「この訴訟を通じてできた仲間たちとの絆こそ最大の成果」みたいな雰囲気さえ漂わせたところに……かくも冷酷に人の死はやってきてしまう。

上映後、監督とのトークセッションが催されていたけど、そこにはこの映画のに原告団として「出演」した方々も列席していて、そのせいもあるだろうけど、ここで交わされた質疑応答は基本的に、国に対する強い憤りに貫かれたものだった。
でもこの映画は被害者側の暴力性だってしっかりと描いていたはずだし、原告団側に肩入れしているように見えて原監督はしたたかに俯瞰の視点を持っていたように思えてならない。側から見て、厚労省の役人も大変だなあ……と思った人だって相当数いたはずだ。ああこれは、真にドキュメンタリーだなあと強く思った。

質疑応答の中で、一番瑣末な質問に思えたけど、一番ひっかかったのが、浴槽に浸かる原告団の一人(女性)をカメラに収めたシーンについてのものだった。いくら年配の方とはいえ、裸同然の格好の女性にカメラを向け、「湯気のせいで咳が止まらなくなり、やっとの思いで痰を吐き出すまでの長回し」を撮影しているんだけど、なぜこんなシーンを撮ったかというと、その女性から「監督、撮りたいでしょ」と話を持ちかけられたそうなのだ。監督は「石綿被害の過酷さを表現するためぜひにと撮らせてもらった」と話していたけど、このエピソードこそ、ドキュメンタリー映画を撮るということはどういうことなのかを端的に表しているように思えてならない。
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