ニッポン国 vs 泉南石綿村の作品情報・感想・評価

ニッポン国 vs 泉南石綿村2017年製作の映画)

上映日:2018年03月

製作国:

上映時間:215分

あらすじ

大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその親族が、損害賠償を求め、国を訴えた“泉南・アスベスト国賠訴訟”。その8年にわたる闘いの全てを記録したドキュメンタリー。

監督

「ニッポン国 vs 泉南石綿村」に投稿された感想・評価

アスベスト、ニュースで聞いて存在は知っていた。そして多くの場合、過去に起こった悲劇という印象を与えられていた。
しかしこの作品はそんな愚かしい印象をひっくり返し、アスベストが明治以降の日本の現在進行形の問題であることを十分すぎるほどに示した、と思う。
yuuki

yuukiの感想・評価

3.0
原一男の作品はあまり観たことがないけど、対立の片側に(過剰に)監督が立ち、油のように介入している作品はドキュメンタリーとしてあまり好みじゃない。

過度に造られたキャラクターたちは愛おしく、問題についてキチンと向き合わなくてはならないと重く感じさせた。

スマホ世代が初めてフリーアプリを用い、SNSに投稿した動画のような作り。
比較的長めの作品でありながら、飽きさせない。
昔の記録を今になって編集した感が上手く出されていて最後まで観やすい。

他の作品も観てみたい。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017の目玉の一つ。原一男の新作である。

アスベストを肺に吸い込むと長期の潜伏期間を経て肺線維症、肺がん等を引き起こす。2005年にクボタの工場周辺住民にアスベスト疾患が発生している事が報じられたのをきっかけにアスベスト健康被害が問題に。石綿(アスベスト)産業で栄えた大阪泉南地域の労働者、家族が国家賠償請求訴訟を起こす。最高裁判決まで8年に渡る長編ドキュメンタリー。


215分の長尺であるが全く飽きさせない。前半で原告及び家族などのインタビューを中心にアスベスト被害の深刻さを描いていくのだが、これが笑えてしまうのだ。泉南の人達は肺疾患で苦しい思いをして事実を認定しない政府に激しい憤りを感じているが、どこか呑気なのだ。ある意味、疾患、訴訟も含めた上で日常に消化してるのかも。


肺がんで亡くなった夫の人柄を語る涙ぐみながら語る妻に原一男が質問する。

「お酒も賭け事もしない真面目なご主人だったんですね」


「...賭け事はやったの。競輪、競馬、パチンコは一通り。パチンコで勝つと5000円くれたの。負けると一言も話さないからすぐ分かったわ」

と語るシーンは場内爆笑。いい夫婦だったんだなあと、それ故にアスベストで死なせることもなかろうにとも思う。


後半から事態は急展開。呑気なお人好し揃いの原告の中で唯一の問題児柚岡さんの登場。遅々として進まぬ裁判に憤り、アポなしで厚労省に行き大臣に会わせろと行動する。弁護士に無断で!本件の結果は知っていたが、それでもひやひやする展開。おま、そんな無茶やって責任とれんのかと。


ただ、原一男にとっては願ってもない展開で後半は柚岡さんを主人公に厚労省の役人への詰問、原告と弁護団との対立とめまぐるしい。

単純に国だけを悪役に描いている訳でもなく原告達の暴力性、そしてそれを煽る原一男の悪意までむき出しにしてて非常に面白い。


ただ、個人的に一番印象に残ったのはクレーマー柚岡さんではなく、前半のインタビューに出てた夫婦(名前は失念)。

夫が工場で働いて肺疾患に。妻はそれに怒って訴訟チームに入るのだが夫はそれに反対する。


「俺はアスベスト工場で一生懸命働いてお前と子供達を食わせてきた。お前はもっと金が欲しいのか。俺はお前にひもじい思いをさせていたのか」

「そうじゃないの。お父さんあんなに一生懸命働いてきたのに、こんな目に遭うなんて酷いじゃない。私はお金が欲しいんじゃないの。こんな事をした人達に謝って欲しいの」

「アスベスト工場がなかったら、俺はお前達を食わせてやれなかった。だからそんなに悪くいうな」


↑多分、こんな感じの会話だったと思う。夫をこんな体にされた奥さんの怒りも分かるし、自分が一生懸命働いた事まで否定されてる気分になってるご主人。本当に普通の夫婦の会話なんだけど、ドキュメンタリーじゃなかったら絶対出てこない会話である。国が悪い、工場が悪いとかそんな単純な話で割り切れないのだ。観終わった後も色々考えてしまう映画である。来年3月公開予定なので是非観ていただきたい。
これは傑作。3時間半全然飽きなかった。前半は泉南石綿村の工場で実際に働いていた被害者の労働者たちやその家族ひとりひとりにインタビューしていき、後半はタイトル通り原告が本格的に国と闘う様子を描いている。やっぱり後半の勢いが本当に凄くて、原告たちの『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三的な過激発言とか行動から目が離せなかった。国の暴力性と原告の暴力性どちらも描いているのが凄い。一応映画では「終わり」(裁判の終結)が描かれるけれど、それは同時に原告にとっては「はじまり」なのかもしれないと思った。ラストは涙が止まらなかった。素晴らしい。
Koh

Kohの感想・評価

4.2
人を人らしく親密さを持ってして撮っていた、いい
梅田

梅田の感想・評価

4.3
原一男の新作はアスベスト公害の国賠訴訟を追った200分超の大作。国の不作為を糾弾する筆圧の強い作風だけど、同時に笑えるシーンも多くてびっくり。夫を石綿肺の合併症で亡くした直後の原告の一人にインタビューするシーンで、「あんなに真面目な旦那さんで、お酒も飲まないしギャンブルもしなかったんでしょう?」という監督の問いに「賭け事はやってました、競馬競輪麻雀パチンコ……」と泣きながら返すとこは場内爆笑だった。「笑い」の多さはこの映画の特徴の一つで、「この訴訟を通じてできた仲間たちとの絆こそ最大の成果」みたいな雰囲気さえ漂わせたところに……かくも冷酷に人の死はやってきてしまう。

上映後、監督とのトークセッションが催されていたけど、そこにはこの映画のに原告団として「出演」した方々も列席していて、そのせいもあるだろうけど、ここで交わされた質疑応答は基本的に、国に対する強い憤りに貫かれたものだった。
でもこの映画は被害者側の暴力性だってしっかりと描いていたはずだし、原告団側に肩入れしているように見えて原監督はしたたかに俯瞰の視点を持っていたように思えてならない。側から見て、厚労省の役人も大変だなあ……と思った人だって相当数いたはずだ。ああこれは、真にドキュメンタリーだなあと強く思った。

質疑応答の中で、一番瑣末な質問に思えたけど、一番ひっかかったのが、浴槽に浸かる原告団の一人(女性)をカメラに収めたシーンについてのものだった。いくら年配の方とはいえ、裸同然の格好の女性にカメラを向け、「湯気のせいで咳が止まらなくなり、やっとの思いで痰を吐き出すまでの長回し」を撮影しているんだけど、なぜこんなシーンを撮ったかというと、その女性から「監督、撮りたいでしょ」と話を持ちかけられたそうなのだ。監督は「石綿被害の過酷さを表現するためぜひにと撮らせてもらった」と話していたけど、このエピソードこそ、ドキュメンタリー映画を撮るということはどういうことなのかを端的に表しているように思えてならない。
山形国際ドキュメンタリー映画祭にて。大阪泉南地域のアスベスト被害者と国との裁判記録。日本の裁判は本当に長い。国が控訴を繰り返したことにより、8年以上に渡って闘うことを余儀なくされた被害者の方々。その間に多くの人がなくなっていく現実。最終的に裁判に勝利するものの、日本という国に対するもやもや感が残る映画。

初めて生で原一男監督みれた。チャーミングなおじさま。本人曰く今までの自分の尖った映画とは違うから面白い作品になったか自信がないそう...良い作品なのに笑
傑作!詳しい感想は後でー。
厚労省乗り込みはまさか監督がけしかけてる??
奥崎には及ばないけど奥崎的素材ってどこにでもいるんだなあ。それとも、監督に触発されて、ああなったのか?

このレビューはネタバレを含みます

土本典昭の魂がデジタルの現世に舞い降りていた!悩める自身に一度カメラを向けるのは原監督らしい。けしかけそうでけしかけない。しかし確実にそれぞれの個性は顕れ始める後半。終わった後のトークも含め、今生きている世界で起きている話を見るのはやはり不思議な感覚だなぁと。柚岡さんのような人を監督はきっと好きなんだろうと思いつつ、そういう人が運動体にいると良いことも悪いことも起こるだろうけど、ドキュメントを展開させていく欠かせない存在だとつくづく感じる。終了後のトークで柚岡さんが指摘していた「経営者の反省」というテーマ。これは柚岡さんにとっての生涯のテーマでもあるし、このアスベスト訴訟に隠れた別の大きな問題だと思う。ゆきゆきてとどこか繋がるような気がしていて、訴訟問題よりも原監督にはそこに行き着いて欲しい願いはある。次作もあると期待して。
直前に観た作品と比べたら、音も映像も全然洗練されていなくて、きたぞ!原監督の作品だ!とワクワクした
今まで原告"団"としてしか見ていなかったものが時間をかけて追っていく中で段々個に解体されていき、その人がどのような人生を送ってきて、なぜこのような考え方に至ったのかが分かるようになっていく。
(割合)穏やかな作品でした。しかし、長い!笑