こしょう

ゆきゆきて、神軍のこしょうのレビュー・感想・評価

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)
4.0
冒頭、いかにもヤバい店と車が写り、次のシーンではそのヤバい車がなぜか祝言の日の車列に連なっている。さらに切り替わって、ヤバい車の持ち主が祝言の席で、朗々と自己紹介をする。
新郎の誰々は不敬罪で一度逮捕されたことがあるが、私は人を殺して服役した後、天皇にパチンコを打ち込んだこと、天皇ポルノビラをばら撒いたことでさらに逮捕された。反天皇という点で私と新郎には共通点がある。などと、とてもおめでたい席で言うことではないことを述べる。あっ、ほんとにヤバい人なんだ、と分かるこの掴み。
そんなヤバい人である奥崎謙三の彼なりの真実を追い求める姿に密着した本作。
奥崎氏は戦争中のある事件の真相、というよりは彼が真相と信じることの正しさを証明するために同じ部隊だった関係者を次々と訪問する。アポ無しで夜明け前に訪れたり、相手が無礼な態度をとったら殴りかかったり、入院中の関係者にあなたがそうした状態になったのはこれまでの行いが悪く神の法に従わないための罰であると独自の因果応報論をぶちかましたりする。
そんな奥崎氏だが、監督曰く、カメラを向けているときは神軍平等兵奥崎謙三を演じていて、その演技臭さに困ったとのこと。そんな奥崎氏は神の法のためなら暴力を続けるとまで宣言する。やはりカメラを向けられるとエスカレートするところはあるんだなぁ、と思うと同時に、映画の結末で奥崎氏が事件の指揮をしたと考える人物を銃で襲撃したこと(さすがにそのシーンは撮影されていない)が明かされるため、そこまでに至ったのはカメラの影響がなかったとも言い切れないのでは?と考えてしまう。
それにしても、奥崎氏が収監されている間に街宣カーで奥崎氏の主張を読んで回る奥崎妻のメンタリティはどうなっているのだろう。
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