2023年226本目
理不尽に翻弄される主人公の「ファニー」という名前が実に皮肉。邦題「ビール・ストリートの恋人たち」は、恋人「たち」って誰? と、ちょっと違和感あり。原題の "If Beale Street Could Talk"「ビール・ストリートが話せたら」の方が、切ない物語に合っているのではなかろうか。
ファニーの経験は、もちろんアメリカ社会の黒人差別や警察、司法の問題を告発してもいるが、むしろ不条理に直面する人間の生を描く文学、という味わいがあり、人種や国境を越えて普遍性をもつ物語だと感じた。原作も機会があれば読んでみたい。