ロク

ビール・ストリートの恋人たちのロクのレビュー・感想・評価

4.8
黒人差別が根深く残っていた1970年代のNYハーレム、19歳のティッシュと22歳のファニーは結婚を誓い合った仲だったが、ある日、ファニーが身に覚えの無いレイプ事件の犯人として逮捕され投獄されてしまう。突然の事態にショックを受けるティッシュだったが、自分の身体に新たな命が宿っていることを知り、母、姉、父そしてファニーの父親と協力して彼の冤罪を晴らそうと奔走するのだが...黒人解放運動にも尽力を尽くした米黒人文学を代表する作家ジェームズ・ボールドウィンの「ビール・ストリート口あらば」を映画化した本作は黒人というだけで言われ無き暴力を振るわれていた時代を背景にした作品だが、オスカー受賞作「ムーンライト」を手掛けたバリー・ジェンキンスは黒人差別の実態にクローズ・アップするのではなく、そんな時代でも愛と尊厳を失うことなく力強く生き抜いていく恋人達の姿を温かい眼差しで描いており、そんな彼らの姿を通じて「人種差別」という言われ無き暴力に対して人間としての誇りと愛を武器に立ち向かって行く彼らの力強さと美しさに深い感動を憶えました。ティッシュを演じた新人のキキ・レインの瑞々しい演技も素晴らしかったですが何といっても身重のティッシュとファニーを影になり日向になり支え続けていくキキの母親を演じたレジーナ・キングの母としての強さと弱さを身体全体で表現したアカデミー賞助演女優賞受賞も納得の演技には震えました!「女王陛下のお気に入り」に続く2019年オススメ映画の1本です。
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