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スリー・ビルボードのtsuyocinemaのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
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【スリー・ビルボード/Three billboards】
アメリカ南部で起こったレイプ殺人事件。
被害者の女性の母親が、街の三枚の看板の広告枠を買う。
1枚目には
「私の娘はレイプで焼き殺された。」
2枚目には 「犯人はいまだに捕まっていない」

3枚目には 「警察長はなにをしているんだい?」 この静かに滾る怒りの意見広告が警察、街の住人、家族などあらゆる人間の感情を揺さぶり、苛立ちと賛意と困惑とが入り混じり、街の空気は揺れ出すのを我々観客は感じる…

わかりやすい群像劇ではないが、この映画はいい意味で誰にも感情移入をさせない。

誰かの正義や信条に加担させず、それぞれの人間の正義や信条をクールに見せつけることで観客に問いかけてくれる気がする。

わかりやすい正解などないし、正解だと思うものは誰かの不正解かも知れない。だから他者への想像力と寛容さを持てと。(僕は勝手に感じ取ってしまいました。『怒りは怒りをきたす』という台詞にはしびれまくり!) こんなことを受け取っちゃったり、考えさせるのは非常に映画的だし、映画を観る意義だと感じる。

登場人物の背景だけでなく、アメリカの郊外の閉塞感、あらゆる差別などについて説教くさくなくさらりと入れるのも流石!! そして、全編ヒリヒリした空気を保ちつつもしっかりとユーモア(元夫の彼女とか小男やあの角刈りのお母ちゃん!!)を入れたり、チンピラ警官の継承と成長(ハリウッドオーセンティックな放蕩息子の帰還手法ですな!)も入れるとこも最高!! 文句なしの傑作!! 町山さん曰くの『魂が震える。』は言い過ぎではない!!
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