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16歳、戦火の恋のParryのレビュー・感想・評価

16歳、戦火の恋(2018年製作の映画)
3.4
混血の少女とナチ将校の息子の秘密の恋。実際にナチスドイツに迫害されたアフリカ兵とドイツ人女性の間に生まれた「ラインラントの私生児」たちに着想を受けた映画。彼らは不妊手術を受けさせられ、投獄の対象となった。他の子と同じように育てたいと言う強い母の愛、内面化した差別、「ドイツ人」として認められたいと言う主人公など現代の日本に暮らす見た目が異なる日本人の子供の境遇に通じるシーンが幾つもある。
些細な禁止事項から迫害は加速していく。姉が大好きな白人の幼い弟は嫌々法律で決められたヒトラーユーゲントに参加するがどんどん差別的な思想を持つようになり変容し、彼女自身も”良いユダヤ人”と言う言葉を使う。母が彼らに言う「彼は良いユダヤ人だったから殺されなければ良かったんじゃない”人間”だったのよ」と言う言葉が重い。
公開前にナチをヒューマナイズするなと炎上したが、この映画でナチの将校は隠れて敵性音楽のジャズを聴き、黒人の少女はナショナリストで彼女を愛する青年はロシア人なら殺すのは簡単と言う。そもそもナチスは人間だから普通の人間らしくて当たり前。差別の複雑さを描いている。
「エリザベス」でアカデミー撮影賞を受賞したレミ・アデラファラシンによる端正な映像と誠実な演出、アマンドラ・ステンバーグ(the eddyと全然違う!)とジョージ・マッケイの若い2人による名演といい、広く観られるべき映画だと思いました。
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