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16歳、戦火の恋のNYoLoのレビュー・感想・評価

16歳、戦火の恋(2018年製作の映画)
3.9
戦争の対義語は愛だ。
でもその愛が犠牲者を生む。



追っかけ中のジョージ・マッケイ、先日観たエブリシングで超絶可愛かったアマンドル・ステンバーグ主演となれば観るのは今しかないと、かなり重いのは分かっていましたが鑑賞です。

時代はジョジョ ラビットと全く同じだと思う。敗戦間近のドイツ。幼い子がヒトラーに傾倒していく様子や、ドイツ人の中にもナチス政権に反対し、攻撃の対象となった人たちがいたことも同じように描かれています。でも私は知らなかった。アフリカ系ドイツ人が、ユダヤ人と同様、あの時代、民族浄化の対象となっていたことを。

本作は、ドイツ人の母とセネガル人の父のもと生まれたレイナと、ドイツ人青年ルッツの悲恋を通じ、戦争の悲惨さと、人種差別の愚かさ、子を思う親の悲痛さを描いています。

ただ人を好きになるだけのことが罪になり、産んだ子どもに自分以上の辛い思いをさせてしまう。母親にとってこんなに残酷なことがあるだろうか。ルッツの父親は、ジョジョ ラビットのキャプテンK同様、軍人でありながら政策には懐疑的で、敗戦の色が濃くなるなか息子をひたすら守ろうとする。息子が選んだ道の先を思っての、父親の選択が辛い。

同じテーマならジョジョの方が作りもうまくて響いたけど、本作は悲惨さも含めてストレートに描いてあったし、坊主にしてまで役に挑んだアマンドルに心動かされました。

若き兵士が板につきすぎのマッケイも、複雑な立場・心境の表現、ラストのショットに至るまで引き込まれました。彼の顔、好きだ。

迫害される側がされる一方ではなく(あの人は良いユダヤ人よ。あの子はユダヤ人だった、あなたは撃つべきだったわ。などの発言にもあるように)、迫害する側が完全な悪でもない。それが戦争のリアルなんだと思う。脳はシンプルにカテゴライズして理解しようとするから、ナチス=全員悪と考えがちだけど、人間はそんなにシンプルではないということも再認識しました。(擁護しているわけではないよ)


最後に。
同じ惑星に住んでいるのだから、私たちはみな同胞だ。人が人を殺す戦争だけは、これから世の中がどうなっていこうとも絶対やってはいけない。

誰もが我が子を守りたいのだ。
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