MikiMickle

ダンボのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ダンボ(2019年製作の映画)
3.6
1941年のディズニー長編映画第4作目の「ダンボ」の実写化。監督はティム・バートン。

大きすぎる耳を持って生まれ、馬鹿にされた象のダンボが、ネズミのティモシーの協力のもとでサーカスの舞台で空を飛べるようになり… 離ればなれになった母との再会を願う。というのが原作アニメのストーリー。あれは全て動物目線の物語でした。
実写化では様々な人間が登場します。母を亡くしたばかりの幼い姉弟(ティモシー的存在)や元サーカス看板スターだった父ホルト、弱小サーカス団長メディチや、ダンボの人気を我がものにしようとする巨大エンターテインメント興行主ヴァンデヴァー、空中ブランコの花形スターのコレット、などなど。ダンボだけでなく、ほぼ人間目線のものになっています。
ストーリー展開としても、色々な人間模様と更なる展開を加えたもので。人間の悪どさを土台として、ピュアな気持ちや親子の再生、異形であるダンボと同じように卑下されてきた人々の姿、前に進む事などをわかりやすく描いた作品でした。


予告などで感じていたCGのダンボのちょっと怖い違和感は、まん丸お目目で可愛く愛おしい姿で全て払拭されました♪ 母に寄り添う姿、めちゃくちゃ可愛い♡ 母と会いたいという一心のダンボを応援してしまいます♡ 可愛い♡
ダンボと同じく母への母性を渇望する姉弟と、父との関係の修復もメインのひとつです。それは「ビッグフィッシュ」にも繋がるものがありました。
様々な成長ストーリーを描いた作品でした。


ティム・バートンの描く2つのサーカスの世界観もさすがだなと。2つの対比もしかり。舞台は第一次世界大戦直後で哀しみ溢れるダークさから始まる素朴さとチープさと見世物小屋的なサーカスと、一方はきらびやかで胸高まる夢の国的な一大テーマパーク“ドリームランド”と。
それらの細かなディテールも、時代的には有り得ない夢の空間のビジュアルも、ワクワクしてしまいます♪
オリジナルではお酒を飲んでしまったダンボが見る悪夢トリップ。それだけはちゃんと見せて欲しい‼と思っていたけれど、違う形できちんと表現されていてとても良かったです♪ 子供向け映画における際どい表現方法の時代の変化の厳しさを感じつつも、ティム・バートンらしさも感じ♪

当たり前だけどかなり子供向け映画だし、彼らしいブラック・ユーモアがあまりないようにも感じますが、実はかなり溢れているとも思います。多分(笑)
例えば配役。ティム・バートン監督の「バットマン リターンズ」で、サーカスギャング団のリーダーの“ペンギン”役だったダニー・デヴィートが、今作では貧困に悩むサーカス団の団長をしています‼(ちなみに「ビッグフィッシュ」でもサーカス団長役だったはず)。
一方で、バットマン役であったマイケル・キートンが金銭にものを言わせて買収する男を演じています。空飛ぶバットマンに憧れと憎しみを抱いていたペンギンが……バットマンが……と、面白みかつ感慨深く、わざわざその反転な配役にしたのも意味があると思います。

そして、独断と想像だけれど、例えばヴァンデヴァーの経営するドリームランドはディズニーランドとしか思えず…経営不振に苦しんでいたディズニーは己を脅かす存在であったピクサーをすったもんだの末に傘下にいれ。ABCやマーベルやルーカスフィルム本社や、最近では21世紀FOXなどを買収してきたディズニーそのものに思え… 実際に数日前のニュースではFOXの…(ネタバレ故 これは割愛)ディズニー映画なのにディズニーへのあからさまなバッシングなんじゃないのかと思いました。ディズニー側としては大丈夫なの?と(笑) ナイスブラック・ユーモア♡

そしてこの映画で1番大事だと思えるのは、畏型のものの哀しみ、差別されているもの、なにかを失ったものへの深い愛は、バートンが今まで作り上げてきた作品の多くで見られるもので、今作でもそれをしっかりと感じます。
オリジナルでも表現されているその本質をさらに深みのあるものにしていると思います。ダンボの実写化監督はティム・バートンしかいないと改めて思わされました。

などなど、爽快感もあり、空間ブランコ乗りのコレットを演じるエヴァ・グリーンの溢れ出すぎる魅力もありっ‼‼ なかなか隠された深みのある作品でした♪
MikiMickle

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