赤ちゃんの頃に誘拐され、犯人夫婦を本当の親だど信じこんで、大人になるまで監禁され生きてきた。本当の両親の元に戻ってきたジェームスは、ブリグズビーベアという犯人夫婦が生み出した架空の番組に異常なまでの執着を見せる。
端からそんな状況を見れば、「異常者が創作したものに洗脳のようなことをされてしまったのでは?」「彼はずっと偽物の世界を見せられていたのか。」と感想を持つのが普通だ。けれど帰ってきた彼は、ブリグズビーベアを制作していたのが犯人だったことを告げられてもなお、目を輝かせ続けた。
それはきっと、普通の子が仮面ライダーや戦隊ものに興味をもったり、少年がマンガの中の主人公に憧れたり、ロックバンドに夢中になったりすることと、なんら変わりないこと。それが彼にとってはたまたまブリグズビーベアだっただけではないかと。確かに、犯罪者の虚構の創作物ではあるが、彼を支え、ときには救ってくれたヒーロー的な存在だったことは間違いない事実。
例え、あまり他人に理解されないようなものに心動かされ、周りから卑下されるようなことがあっても、自分の好きなもの、好きなことは愛し続けてほしいというメッセージをこの映画から受け取った。
生きるエネルギーになったり、指針になっているようなものをなかったことにするのは自分自身を捨てるようなもの。過去に虜になったブリグズビーベアを好きなままでいたからこそ、彼はブリグズビーベアの映画を自ら作りだし、前に進むことができた。誘拐させるという忌まわしい過去があったとしても、過去を否定することがなかった彼だけが未来を創造できる。
この映画が伝えたいこと、表現したいことが痛いくらい感じられた。ささいなことにでも情熱を注ぐことへ、そのままでいいんだよ!その気持ちを大切に!という強い肯定が勇気をくれた。