さすらいの用心棒

ブリグズビー・ベアのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.0
小さなシェルターで両親と暮らす25歳の主人公は、教育ビデオ『ブリグズビー・ベア』を見て育ってきた。ある日、警察がやってきて両親を逮捕し、彼を連行してしまう・・・。


「好きなこと」は人生を豊かにしてくれる。

「好きなこと」を持っているだけで、それを共有する仲間が生まれ、その仲間との交流がまた人生を豊かにしてくれる。

ただ、主人公の「好きなこと」は共有するにはあまりに特殊過ぎた。それは、誘拐監禁された彼のためだけに作られた門外不出の教育ビデオ『ブリグズビー・ベア』。

だからいくら周囲に『ブリグズビーベア』について熱っぽく語っても、わかる人などいない。わからないのはこの映画の観客も同様で、最初はキモオタメガネくんが訳の分からないことを吹聴しているようにしか見えない。

だけど、彼の「好きなこと」への情熱が伝わるにつれて、「好きなこと」を持っている人にとって他人事のように思えなくなってゆく。

それは観客だけでなく、彼の周囲の人々にも新たな「好き」を発見させ、かつてその人が「好き」だったことを思い出させてゆく。

やがて彼は大好きなものを通して、人と人をつなぎ、25年間不在だった社会に自分の存在を確立させてゆく。

「好き」であることがすべて何かにつながるわけではないけれど、「好き」にはそういう力がある。

だから、「好き」であることを止めてはいけない。

そんなことを教えてくれる映画です。だから、好きなんです。