NoriakiHoriuchi

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのNoriakiHoriuchiのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

ダニエル5部作の最終話。タイトルは意訳すれば「死ぬにはまだ早い」といったところ。

前作時点で辞めたくなるまで搾り尽くしたダニエルに無理を言って撮らせてもらった一本。
ほんとは2本撮りたかったけど断られちゃったからその分1本に詰め込みました、という風情の163分。

それでいて不思議と長さは感じません。シリーズお馴染みのキャラクター、そして今回追加されたキャラクター。いずれも欠けることなく緩急つけながら流れるように話が進みます。一分一秒たりともカットしたくない、これは必要な瞬間だから絶対に入れるぞという製作チームの執念が伝わってきます。007、ジェームズ・ボンド、そしてダニエル・クレイグへの愛情で満ち溢れています。

そんなわけでダニエル・クレイグのボンドが好きならたまらない作品に仕上がっています。他方で筋金の入った007ファンには賛否両論かも。しかしながらダニエルシリーズに課せられた使命を理解している方々であれば、一周回って「うんうん、それもまた007だね」と頷けるのではないでしょうか。

以上からおそらくお察しのように、今作から007を見始めるのはおすすめしません。悪いことは言わないのでダニエルシリーズ第一作「カジノ・ロワイヤル」から見ることをお勧めします。

予習あんまりしない派ならせめて「スペクター」だけでも見てほしい。2本いけるなら「カジノ・ロワイヤル」から。3本なら「スカイフォール」も挟んで。時系列順で見てください。慰めの報酬は余裕があればで大丈夫。笑

以下ちらっとネタバレ。

前作で007史上最強とされる宿敵を倒してしまったので、今作はいわば蛇足の一本です。敵はとてつもないことを企んでいますが小粒感が否めません。筋書きに粗もあるし。でも仕方ないんです、そもそもが延長戦なので…!そしてダニエルへのはなむけです。全編ファンサービスと言っても過言ではありません。それを踏まえて割り引いて観るとなかなか楽しめます。過去作の要素の引用、今回も続々披露されるお約束、敢えての外し、そのどれもが愛おしい。この163分は「もう一本観られる幸せ」をゆっくりと噛み締めるために用意された時間です。

「世代交代」が今回の裏テーマ。後任の"007"がいたり、ポンコツ新人エージェントが大活躍したり、盟友が無念の退場をしたり、実はボンドに子供がいたり…ビシビシと吹きつける世代交代の風の中でボンドも自らの身の振り方を固めます。そして訪れる最後の瞬間。

私たちにもダニエルのボンドにお別れを告げる時がやってきたようです。個人的にはこんな結末はあんまりだと思いました、でもそういう無情さも含めてダニエルのボンドなんだなと。愛に裏切られ、それでも愛に生きた男の物語がここに終わりました。

時間は限られている、人生には1秒たりとも無駄にできる時間はないんだ。そう心に刻んでくれる映画でした。

……え?これが007!?笑
NoriakiHoriuchi

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