菩薩

少女は夜明けに夢をみる/ 夜明けの夢の菩薩のレビュー・感想・評価

4.0
夢は?と聞かれて「死ぬ事」と答える。きっと初めは冗談だったはずだ、それがいつしか口癖になり、遂には夢になってしまったのだと思うと、それだけで心が張り裂けそうになる。

簡単に言うと『存在のない子供たち』のドキュメンタリー版であり、本来であれば『ぼくら、20世紀の子供たち』で断ち切らねばならなかった人間の業。彼女達にとっての両親もしくは血縁者は庇護者ではなく、家は安住の地では無い。彼女達にとっての父親ないし男性血縁者は彼女達を凌辱する者、母親は虐待を加えてくる加害者、兄弟も基本的には皆犯罪者であり、彼女達が痛みを分かち合える相手はその施設の中にしかいない。おそらく自分の様な一人間がどれだけ努力してもその絶望には辿り着けないだろうし、絶望で凝り固まった心に届く言葉は差し出せないだろう。衝撃体験を自虐めいて笑いを交えながら語った後に、後悔と悲しみを滲ませながら涙を流す。神よ、愛されたいと願う事は罪なのですか?そんな叫びが聞こえて来るようだった。腕には必死に生きようとしたのだろう、生々しい横線が数多く刻まれている、どんな思いでその刃を引き続けたのか、その回数だけ諦めなかった彼女を素直に讃えたい。心の傷は表には出ない、歌って踊って戯ける姿は紛れもなく普通の少女であり、赤児を慈しむその姿は美しき母であるが、彼女達は「少女」なのである。運命として片付けてしまうには余りにも過酷である、しょうがないとしてしまうのは無責任だ。個人がいくら更生しようとも、社会が更生しない限りこの連鎖は続いていく。はっきり言って絶望している、だが俺には絶望する権利など無い。彼女達の「その後」は全く映され無いが、どうか…どうか…と願ってやまない。
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