くりふ

泳ぎすぎた夜のくりふのレビュー・感想・評価

泳ぎすぎた夜(2017年製作の映画)
3.5
【雪はそんなに冷たくない】

(当時)一昨年の東京FILMeXで気になったが、行くまでの食指は動かず今回レンタル。

映画的挑戦としては買い。が、逆に映画の限界も感じさせられた。

一面雪の青森、弘前、6歳の少年による無軌道な冒険。少年には可能な限り、自由に演じてもらったようだが、“可能な限り”の作為性が、時に邪魔をして、我に返ってしまうことが何度かあった。

主人公のメンタリティが、少年というより赤ん坊に近いことが本作の肝ですね。何をしでかすかわからないが、見ていると、大したこともしないとわかってくる。その点から79分は長い。60分以内に収まったら、ずっと見易く、心にも残った気がする。

カメラはやっぱり他者で、少年にはなれない、と当り前のことを意識させられた。

飼い犬に吼えかけ遊ぶシーンがわかり易い。犬に向かって吼えて、と指示を出し、やらせている構造がしっかり透けてしまう。

例えば、少年は好きにさせておき、映画の意図がプログラムされたAIロボットカメラを数台追従させ、後でそれを編集したらどうか。映画になるのか?どこまで面白いのか?という挑戦はぜひ見てみたい。

雪国はそのままでサイレント映画の舞台となりえる、と気付きをもらえる仕上がりは面白い。あと、日本らしく見えないショットに見応えあった。フランス人監督演出による好影響でしょう。

満足度は高くなかったけれど、挑む映画をみた!という嬉しさが残ります。

こういう映画が、シネコンでレイトショー上映されるくらい、日本の映画環境も豊かになるといいなあ…と、真っ白な世界にぼやきたくなりました。

<2019.2.19記>
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