Masato

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のMasatoのレビュー・感想・評価

4.6

真実を伝えるために

「高地戦」のチャンフン監督作。国内外で絶大な評価を得た実話映画。

光州事件を扱っていますが、事前に調べないで、見た後に調べた方が良いでしょう。というのも、この映画は、主人公が光州で起きていることを知らずに行ってしまうという、「アトラクション映画」的な要素があります。私たちも光州事件のことをよく知らない。タクシー運転手である主人公と、何も知らない私たちが重なるようになっているからこそ、その場にいる感覚で、よりストーリーに入り込み易く、それでいて分かりやすい。感情移入もしやすく、感動が増す。これが世界の人々から讃賞された要因でしょう。

そして、ジャーナリストのピーターと同行することで、ジャーナリズムを問わせる内容にも拍手。真実を伝えることの価値・本質を考えさせられる。「ペンタゴンペーパーズ」を彷彿とさせた。こういうの大好きだから最高に泣けた。

韓国映画特有のバラエティに富んだ内容も見所。昭和のコメディかと思いきや、アクション映画になり、ジャーナリズムを問う映画になり、遂には感動のドラマに変貌する。全てが深い。とあるシーンは、あまりにも惨すぎて涙が出てしまった。その後のシーンでも、とにかく人の情に訴えかけるシーンが多くて涙が止まらない。

やはり、韓国映画には勝てないと感じてしまう。自らの黒歴史を批判し、かつエンタメ作品として完成させる。その映画が1000万人を超える大ヒットを飛ばす。鑑賞者の意識が日本は劣っている。この映画を見て日本は見習うべき。

名優ソンガンホがこれまた良い演技をする。溢れ出る感情を抑え込もうとするところがなんとも言えない。大好きなユ・ヘジンも出ていて良かった。


追記
先日鑑賞したネトフリオリジナルの韓国映画「鋼鉄の雨」にこんなセリフがあった。

「分断国家の国民は、分断そのものより分断を政治的利権に利用する者たちによって苦しめられている」

まさに、この映画の出来事と絡めて言っているのでは?と感じた。
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